学生記者がお仕事の魅力を発見!仙台イケてる会社訪問
イケ社

お客様の笑顔のために!一人ひとりが自分で考え行動「株式会社一の坊」

進藤 陽介 進藤 陽介
1,380 views 2016.01.29
進藤 陽介 進藤 陽介 東北大学2年(執筆当時)
年が明け、2016年がやってきました!学生はちょうど期末テストの期間中ですね。テスト勉強に精を出しつつも疲れを感じ、「息抜きしたいなぁ」と思っている人もたくさんいることと思います。というわけで、学生のみなさんにWEBの中だけでもリラックスした気分を味わってもらうためにも(?)今回はあの有名なホテルやレストランを経営する「一の坊」を取材してきました!

一の坊ってこんな会社

一の坊は宮城県内有数のホテルグループです。現在、「作並温泉 ゆづくしSalon一の坊」、「蔵王の森がつくる 美と健康の温泉宿 ゆと森倶楽部」、「温泉山荘 だいこんの花」そして「松島温泉 湯元 松島一の坊」という4つのホテルを経営しています。どのホテルも作並、蔵王、松島と自然豊かなところにあり、木々に囲まれてゆったりと温泉に浸かったり、地域の素材をふんだんに使った食事を食べたり、運がよければリスなどの小さな森の動物と触れ合ったりすることもできます。「お客様が一の坊でリフレッシュをして元気になってもらえるように」との思いで、宮城の豊かな自然の中でゆったりとくつろげる環境を整えており、リピーターも多く、年間来客数は約18万人。県内でも人気のホテル・旅館として知られています。また、これらの宿泊施設の他、仙台では、仙台黒毛和牛を炭火焼きで食べられる「炭焼和牛 和火一」、松島では、新鮮な牡蠣やあなごを提供する「かきとあなご 松島 田里津庵」、「藤田喬平ガラス美術館」を経営しています。

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▲「作並温泉 ゆづくしSalon一の坊」にある広瀬川の源流と木々に囲まれた露天風呂 (写真提供:株式会社一の坊)                                 

そんな一の坊の本社は、実は仙台のど真ん中にあります。活気ある定禅寺通りを小道にそれると2階建ての小さな社屋が佇んでいました。

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今回取材したのはこのビルの中にある「人事部」と「営業推進本部」。どちらも一の坊のホテル事業を裏から支えている部署です。人事部は新入社員の採用やグループ間の人事異動といった人事管理を行う部署。営業推進本部は、各ホテルのメディア取材対応や、宿泊プランの作成などを行っています。新作の料理をどのようにお客様にご案内するか、宿泊プランに組み込むかを料理長や支配人と話し合ったり、一の坊グループの会員制度である「一の坊倶楽部」の顧客情報の管理や会報誌の作成も行っています。今回はこの2つの部署でお話をお聞きし、一の坊グループの魅力を探りました。

仙台の企業魅力

ホテルとお客様の架け橋を務める営業推進本部

いかによい自然環境や立派な宿泊施設を用意しても、それだけでお客様に来てもらうことはできません。たくさんのお客様に実際に宿泊してもらうためには、ホテルのブランドイメージをアップしたり、テレビや雑誌など各種メディアに登場したり、積極的にプロモーションをすることが欠かせません。しかし、現場のホテルスタッフが接客の合間にメディアの取材対応をするのはとても大変です。写真を撮るためにお客様の出入りを一部規制したり、インタビューに答えたりといった対応を通常の業務と平行して行うのはかなり難しく、こうした業務を専門的に行う部署が必要になったことが、営業推進本部が設立された一つの理由でした。営業推進本部ができてから、メディアの取材を積極的に受けることができるようになり、また、ホテルのリニューアルや新しいメニューの情報を頻繁に発信するようにもなって、露出が高まったといいます。

こうしたメディアへの対応ばかりでなく、実際に宿泊してくださったお客様に対してダイレクトメールなどで積極的に情報を届けたり、お客様の声を現場に届ける役割も営業推進本部は担っています。各ホテルに設置されたアンケートを集計し、それをフィードバックすることで、どのサービスを改善するか、どのサービスをもっとメディアに対してPRしていくかなどが決定されます。営業推進本部は、一の坊の魅力をお客様に、お客様の声を一の坊に橋渡しする役割を担っているのです。

さらに、ただ発信するだけではなく、売上もきちんと意識しています。毎日集客数とにらめっこしながら、目標数を達成するにはどんな発信方法が効果的かを模索しているそうです。複数ある施設の情報を集約して共有できるからこそ、データ分析や、それを活用した商品づくりも行うことができます。平日の来客数が少ない状況から、平日にもお客様に来ていただくために「ぜいたくな時間」と銘打ったプランを作って広報するなど、幅広い層のお客様のニーズに寄り添いながら、日々売り上げのアップを目指しています。

営業推進本部はたった6人の部署ですが、ホテル・お客様・メディアの三者をつなぎ、お客様は一の坊でくつろぎの時間を過ごし、一の坊はよりお客様に喜ばれる「価値ある商品」を提供する、良い循環を創り出しているのですね。

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▲会議をしている営業推進本部のみなさん。

常にお客様の目線に立ち、温かいコミュニケーションを心がける

「仕事をする中で常に大事にしているのは現場の空気感です。ホテルの雰囲気やお客様の声を代弁して、いかに伝えるかを考えています」と営業推進本部の吉川美紀課長。吉川さんは年に数度は私服を着て「お客様」として一の坊のホテルに泊まっているそうです。バスに乗ってホテルに行き、一の坊の施設でゆったりとリフレッシュする。その中で率直に感じたことを基に広報誌や宿泊プランを作る。お客様の視点をとても大切にして仕事をしているのが分かります。
また、営業推進本部では、一の坊グループの会員制度である「一の坊倶楽部」のお得意様に「お元氣ですか」という会報誌を年に4回送っていますが、温かみが伝わるようにと、本文は手書き。スタッフが交代で書いています。お客様とのコミュニケーションを大切にするため、アンケートに書かれた意見にスタッフが回答するコーナーがあったり、現場で働くスタッフの顔や声を載せたりしています。「新入社員が入る時期には新入社員の顔を載せたりするんですよ。読者は50~70代の方が多いので『孫みたい、今度会いに行こうかしら』というお手紙をいただいたこともありました」と吉川さん。
社員がお客様の目線に立ち、気持ちに寄り添うことで、温かなサービスや、親しみのこもったやりとりが生まれています。

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▲会報誌「お元氣ですか」。スタッフの顔写真も載っていてより身近に一の坊を感じることができる。

組織を活性化させる社員教育

「幹部候補として一の坊を背負っていく意識のある人を採用し、早い段階で役職に就けることで責任感を育てています」と話してくださったのは、人事部の高橋勝義主任です。
喜ばれるサービスを常に生み出し続けるため、自ら考えて動くことのできる意欲のある人を採用することに始まり、若い従業員を早くスキルアップさせるため、人事異動が多いのが一の坊の特徴だそうです。

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▲社員教育について熱心に語る高橋勝義さん(右)。左は営業推進本部の吉川美紀課長

一の坊の新入社員は、入社1年で担当ホテルを移動します。また、新人だけでなく、各ホテルの中心となるような人物も積極的に他のホテルへと移動させているそうです。様々な経験をしてノウハウを身につけることで社員一人ひとりの成長を促し、10年働かないと役職に就けないような会社が多い中、一の坊では早くて3年で役職をもらえたり、リーダーになれたりするのです。

意欲のある人を採用することによって組織が活性化される。組織が活性化されることによって従業員がより成長できるようになる。成長し役職に就いた従業員が先輩となり、新入社員に責任感を示しながら一の坊を引っ張っていく。そんなサイクルが一の坊には根付いていました。

一人ひとりが一の坊を背負う

全国にホテルは約4万5千件あります。その中で「やっぱり一の坊さんだよね」、「一の坊のホテルに泊まりたい」、「一の坊に泊まるために仙台に来たよ」と言ってもらえるように「違い」を大切にしているという一の坊グループ。接客もただこなすのではなく、従業員一人ひとりが「どうすればよりお客様に喜んでいただけるか」を考え常に研鑽しています。
時には、従業員同士でお客様が一の坊でより快適に過ごすためのアイディアを出し合い、実践します。大浴場でスリッパを脱いでもどれが自分のものか分かるように部屋番号のついたクリップを利用できるようにしたり、「温泉からあがり、体が火照っているお客様は何か冷たいもの欲しているのではないか」という考えから、湯上がり処でアイスキャンディーを無料で配るサービスが生まれたりました。こうして生まれたサービスは各ホテルの支配人による会議でも共有され、他のホテルでも取り入れられた事例もあるそうです。上司から言われたことを言われた通りにやるのではなく、現場でお客様と向き合う従業員一人ひとりの努力やアイディアによって、一の坊は「お客様を笑顔にできる企業」であり続けているのですね。

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(提供:株式会社一の坊)

2時間という取材時間の間に何度も何度も「お客様」という言葉が出てきました。ホテル業だから、人と関わる仕事だから、当然といえば当然かもしれません。それでも、取材を受けてくださった一の坊の方々がいきいきとお客様のことについて話す姿が忘れられません。
私は将来どんな仕事に就くか具体的に決めていません。それでも、人と関わり、お客様が喜ぶことに生きがいを持てる仕事、お客様やそこで働く人々を笑顔にできるような仕事をしたいと、強く思いました。

進藤 陽介進藤 陽介東北大学2年(執筆当時)
文章:進藤陽介(東北大学 2 年)
写真:鎌田尭(東北学院大学 4 年)
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株式会社一の坊
http://www.ichinobo.com/

この記事を書いた人

進藤 陽介
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