テラス

お母さんが安心して働ける場を「NPO法人ピースジャム」佐藤賢さん

及川 愛結 及川 愛結
444 views 2015.12.29

お母さんたちが安心して働ける場を提供

12月11日のいぐするテラスは「三陸で働くという選択」第4回。気仙沼市を拠点に活動するNPO法人ピースジャムの代表、佐藤賢(さとう・けん)さんにお話を伺いました。働くところは「傍(はた)を楽にする場」、子どもを育てるところは「育自の場」と考える佐藤さん。小さな子どもを持つ女性が働きながら子育てできるよう、お母さんを支援する工房を開いています。

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▲2014年に完成した手作りの工房(ピースジャムのホームページより)

モチベーションアップに繋がる職場

2014年に完成した工房では、お母さんたちがジャムや布製の小物を作っています。「子どもが遊ぶキッズルームや公園、授乳室も完備しているため、みんな安心して働いています。他の人がどのように子どもを育てているか見ることもできます」と佐藤さんは笑顔をのぞかせます。たくさんの大人の中で育った子どもは感性が豊かになるそうです。「整った環境が仕事や育児のモチベーションアップに繋がるのでは」と自信を見せます。

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▲工房の隣にある公園(ピースジャムFacebookより)

2011年9月、佐藤さんが以前事務所として使っていたアパートの一室に、働きたいと強く願っていた3人の母親が集まりジャム作りを始めました。「あえて被災地の野菜を使うことで、安全性を証明したかった」と、放射能が飛散しているのではと敬遠されていた被災地のトマト・にんじん・たまねぎを使いました。農家のもとへも出向き、野菜の作り手とジャムの作り手が顔を合わせ、「作り手の立場でどうありたいか」を考える場を設けたと言います。お互いが安心してものづくりをしていくための工夫だそうです。

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▲ピースジャムで作っているジャム

活動を始めた翌10月から祭事やインターネットでの販売も始め、売り上げは運営費と給料にしました。この活動を知った人たちから「一緒に働きたい」との声が出始め、人数が増えていきます。コミュニティとして大きくなり、場所が足りなくなったため、子育てしながら働ける工房を作ることにしました。

目の前にある命を助けたい

2011年の東日本大震災までは、気仙沼でバーを経営していた佐藤さん。被災して店はなくなってしまいました。佐藤さんには妊娠している奥さんと、当時8ヶ月の娘がいました。避難所で生活しているとき、「ミルクを買ってきてほしい」と奥さんに頼まれます。町中の店を回りましたが、どこも閉まっています。唯一見つけた薬局には先頭が見えないほどの行列ができていました。中には、震災のショックで母乳が出なくなってしまったという母親も赤ちゃんを抱っこして並んでいました。「店や家がなくなってこれ以上失う物はないと思っていたのに、目の前の子どもが亡くなるかもしれない」と佐藤さんは恐怖を感じたと言います。不幸中の幸い、車のガソリンは満タン、店の売り上げでお金もあったため古川まで車を走らせ、たくさんのミルクとおむつを買って気仙沼の避難所へ届けました。喜んでくれるはずと思って届けていたのに、瞬く間にすべてなくなり、受け取れなかった母親もいて、かえって混乱を招いてしまったそう。「こんなにも困っているお母さんたちはいるんだ」と実感した佐藤さんは聞き取り調査を始めます。そこで「働きたい」「子どもの遊び場がほしい」という声が多いことに気が付きました。

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佐藤さんは「工房での働き方をビジネスモデルとして体系化させて波及していきたい」と言います。これまで工房を運営していて「働きながら育児もできるから、3カ月で仕事に復帰できます。出産したあとに居場所があると心強いです」と話すお母さんたちが多かったそう。同じような整った環境をもっと提供していきたいと話してくれました。

女性にとって憧れの場所!

宮城教育大学3年 菊田真由さん

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以前から佐藤さんの話を聞いたことがあったので、興味を持って参加しました。自分の子どもだけでなく、他の人の子どもまで育てる助けをしつつ、地域のニーズを探しながら活動していたのがすごいと思いました。特に印象的だったのは「なぜ男性なのに子育てをする母親を支援するのか」という質問に対し、「男女関係なく、人として関わっている」と答えていたことです。

東北学院大学4年 帖佐和加子さん

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ママさん向けの職場がうらやましく、自分も働きたいと思いました。工房は誰でも自由に入れるということだったので、子ども好きの私にとって、とても訪ねてみたい場所です。

取材を終えて

思わず聞いてしまった「なぜ男性なのに子育てをする母親の支援をするのか」という質問に対し、佐藤さんは「男女関係なく『人』として関わっています。自分が男性だっただけ、手を差し伸べた相手が女性だっただけ」と答えてくれました。誰かの力になろうとしたとき、相手の性別なんて関係ないことに気づかされた私ははっとしました。私なら、異性の助けになりたいと考えたとき、周りの人からどのように思われるのか、気にしてしまうと思います。性別にとらわれず、行動したいと思ったらするべきなのだと感じました。

文章:及川愛結(宮城学院女子大学3年)
写真:及川愛結(宮城学院女子大学3年)、安部静香(いぐする仙台)
写真提供:NPO法人ピースジャム http://peace-jam.jimdo.com/
Facebook https://www.facebook.com/peacejam.kesennuma/timeline?ref=page_internal

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この記事を書いた人

及川 愛結
及川 愛結
宮城学院女子大学(執筆当時)
同じ名前の人に未だ出会ったことがない「あゆ」です。某水族館に行くとオイカワとアユが一緒の水槽で泳いでいます(笑)でも水槽ではなく、本屋さんかIKEAに住みたいです。しゃべるとギャップがあるらしいので、ぜひ引き出しを開けてみてください!