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車を支えるタイヤで社会も支える!縁の下の力持ち「タイヤショップ亘理ゴム」

高橋 直道 高橋 直道
1,074 views 2015.08.25
高橋 直道 高橋 直道 東北大学
車は大切な生活の足です。特に、ここ東北では車は日常生活に欠かせないものです。車に関わる会社というとすぐに思い浮かぶのは、トヨタや日産のような自動車メーカーかもしれません。でも、大企業だけが「車社会」を支えているわけではありません。数え切れないくらい多くの中小企業が「車社会」を支えています。今回はタイヤの販売・修理・保管を行っている「株式会社星商事 タイヤショップ亘理ゴム」を取材してきました。

株式会社星商事 タイヤショップ 亘理ゴムってこんな会社

タイヤショップ亘理ゴムは、仙台市太白区郡山にあります。主に一般のお客さん向けに乗用車や軽トラックのタイヤを販売しています。新品だけではなく、中古のタイヤも多く取り扱っています。

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昨年の冬からは、従来の販売・メンテナンスに加えて、タイヤの保管サービスも始めました。夏用タイヤと冬用タイヤの両方が必要な東北地方では、タイヤの置き場所に悩むひとも少なくありません。5年くらい前にお得意さんからの要望で預かったのをきっかけに、ニーズがあること感じ、使用しない期間中のメンテナンスも含めたサービスとして提供できるよう、体制を整備しました。お客さんの声に応え、お客さんの気持ちに寄り添うことによって、亘理ゴムはお客さんから信頼されてきたのです。

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この他にも亘理ゴムは、タイヤの安全・安心を保証するため、全ての工程に最大限気を配っています。例えば、タイヤの付け替えのためにタイヤとホイールを分解したとき、ホイール側にタイヤのゴムが付着したままにしてしまうと、付け替え後に隙間からエアーが漏れてしまう場合があるそうです。このため亘理ゴムでは、作業効率は落ちても、スチールワイヤーでゴムカスの除去研磨をするなどしているのだそうです。タイヤのプロとしてお客様が自分では気づかない部分までケアすることで、地域の暮らしに欠かせないお店となっているのですね。

仙台の企業魅力

環境への配慮

「もったいないを加学する」。亘理ゴムの経営理念の一節です。
「まだまだ使えるものが捨てられるのはもったいない、使えるものはもっと使ってもらいたい。『もったいない』という日本ならではの価値観が、今では世界共通の言語として認められるようになっているんです。」と代表取締役の星克己さん。

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亘理ゴムのタイヤ販売では、中古タイヤと新品タイヤの割合は4:6です。使われなくなった中古のタイヤを別のお客様が購入して使うことで限りある資源が有効に使われると考えて、中古タイヤを多く取り扱っているのです。またその際、ただ販売するだけでなく、科学や化学、数学、統計学などあらゆる【学び】を加えることにより、より研ぎ澄まされた、他社にはない強みをもって事業を維持発展させていきたい、という思いが、「加学する」という言葉には込められているそうです。

この「加学」の精神で、「将来的には廃タイヤを再生エネルギーとして使えるようにしたい」と星社長。「タイヤに含まれる化石燃料は約60%。熱効率は重油に比べ88%です。『廃タイヤに再び命をふきこむ』ために、異業種の会社と連携することもはじめています。」と、熱く語ってくださいました。

地域とともに経営環境をつくっていく

取材の途中、ふと星さんから「社長の仕事って何だと思う?」と問いかけられました。思いもしない質問に私は答えが全然思い浮かびませんでした。星さんが考える社長の仕事は3つ。

○よい経営者であること
○よい会社をつくること
○よい経営環境をつくること

ここで私が気になったのは「よい経営環境をつくること」です。「経営環境をつくる」と聞いてもすぐにイメージがわきませんでしたが、星さんは優しく説明をしてくださいました。
「経営環境」とは、会社のある地元の経済の環境のことです。亘理ゴムでいえば、仙台・長町という地域を盛り上げていくことが「よい経営環境をつくること」になるのだそうです。
「地域に食べさせてもらっている」そう考えるからこそ、「自社だけでなく地域全体が元気になることを考えている」と星さんは言います。こうした考えから、仙台で一番大きくて古いともいわれる長町商店街の夏祭りでも、運営の中心的な役割を担ってきました。これも、周りの会社・商店街とともに地域を盛り上げていくために必要な経営者としての仕事なのだそうです。
「地域に仕事がないと若者が都会に出て行ってしまう。就職して一度出て行った若者が地元に帰ってくるのは難しいです。」そう語る星さんはもの寂しげでした。これからも周囲の会社と力を合わせて、地域全体の元気を作っていってくれることでしょう。

人と車の感動創造業

星さんは10年前にお父さんから事業を継ぎ、近年、経営者の仕事とは何なのか、本質的なことを学ぶために「中小企業同友会」に参加しました。そこで異業種の会社と交流したことが一つの転機になったそうです。「経営指針をつくる会」に参加したことで、経営者として世の中に対する使命を果たすために「経営理念」をつくる必要があることにも気づき、自社の仕事を「人と車の感動創造業」と定義しました。

また、亘理ゴムは「社員満足度only.1の企業」を目指しているそうです。現在、37歳、27歳、21歳の社員がいますが、社員を採用するときには、その人が亘理ゴムで育ち、自立した社会人として地域に貢献する人間になってほしいと願っています。社員の自主性を尊重し、社員が自分で考えて行動し、与えられた以上の仕事を創造していってくれるよう伝えているそうです。「社長の給料を決めるのは社員」「社員の給料を決めるのはお客様」。社員を幸せにすることが、ひいてはお客様の幸せにもつながると考えて、社員の声に寄り添うことからお客さんに還元していきたいと思っているのだそうです。

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「会社選びは手段。手段にこだわるのではなく、その先にどんな生き様をしたいか。名前だけで会社を選ぶのではなく、どれが自分にとっての『ベスト』になるかを考えてほしい。中小企業の中にもきらっと輝く会社があります。」
星さんは、これから「仕事」を選ぶ若者にそうエールを贈ってくださいました。中小企業の中にも、大企業に勝るとも劣らない優れた会社があります。企業の98%を占めると言われる中小企業は宝の山かもしれない、と星さんの言葉を聴いて思いました。
メーカーがタイヤを製造し、タイヤショップはそれを販売する役割です。そのため、タイヤの性能では、タイヤショップどうしでは比較競争出来ません。その分、差をつけることができるのは「サービス」の部分になります。亘理ゴムを取材して、「サービス」とは周りの人・環境にプラスになるように動くことなのではないかと思いました。「お客さんの思いに応えること」「環境に配慮すること」「社員を幸せにすること」を実践するために、亘理ゴムはタイヤを販売・修理・保管する際に細かな心遣いをしてきました。「サービス」を徹底していくことがよりよい「環境」をつくっていくのだと理解することができました。

今回の取材を通して、星さんに「地球環境のこと」「地域の経済のこと」について中小企業の役割を教えていただきました。学生という立場からは大企業ばかりが目につきますが、身近な地域にある小さな会社かだからこそできることも少ないということに気づくことができました。ネームバリューだけに囚われず、視野を広げることで新たな会社や人との出会いが訪れるかもしれません。
高橋 直道高橋 直道東北大学
文章・写真:高橋 直道(東北大学2年)
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株式会社星商事 タイヤショップ亘理ゴム
http://www.watarigomu.jp/
住所宮城県仙台市太白区郡山8丁目5-38

この記事を書いた人

高橋 直道
高橋 直道
古いものが好きで、新しいものが苦手なアナログ大学生。落ち着く場所はお城やお寺。いぐするでは、老舗や伝統工芸に行ってみたいともくろんでる。