自然とともに生きる“暮らしづくり”を伝えていく地域工務店「建築工房零」
こんなに謎が多くて、気になる会社はない!ということで学生記者・阿部(通称:あべちゃん)が潜入取材してきました!
建築工房零って、こんな会社!
2005年7月7日に設立し、今年10周年を迎える「建築工房零(ぜろ)」。設計から施工、アフターメンテナンスまでを自社で行う、地域密着型の工務店です。
ほかにも、キッチンや家具などの製作販売、木質バイオマスエネルギーを使用する薪・ペレットストーブや、太陽エネルギーを使用する空気集熱式ソーラーシステム「そよ風」などの自然エネルギーの提案・施工、もともとある家を住みよく直すリフォームやリノベーション住宅といった中古住宅を提案する不動産業など、多岐にわたります。
零では、家づくりはもちろんのこと、住まいがより楽しくなるような「暮らしづくり」を提案しています。
「本当の意味での家族の幸せを作るような家づくりをしたい」
社長の小野幸助さんは、同じテレビ番組をそれぞれ自分の部屋で見るような家族のあり方に、違和感を抱いていました。「1人1人に部屋が用意された立派な家を建てることではなく、小さくても家族のつながりの感じられる家で幸せに暮らすことが、本当に豊かな暮らしだと思っています」
この暮らし方の展示場として、昨年3月に事務所1階に「ゼロ村市場」をオープンさせました。
家づくりという枠を越え、日々の暮らしの無駄なもの、余計なものを削ぎ落とすことで見えてくる暮らしの本質に触れてほしい。その思いから、天然素材を扱うカフェやバー、自然食品の販売、無垢素材の家具などがあり、その空間は薪・ペレットストーブの温もりに包まれています。写真展や映画上映会ができる貸しスペースとしても幅広く活用され、地域のコミュニティスペースとして愛用されています。
「暮らしづくり」を広める場はほかにもあります。小野さんが講師となり、間取りや設計のノウハウ、自然エネルギーを活用した暮らし方をアドバイスする「すまいと暮らしの設計塾」は、「設計を知ることで、より家に愛着を持てた」「これからの暮らしづくりが楽しみになった!」と好評を博しています。
社員が企画した、自身が「暮らしづくり」を楽しむための持ち込みワークショップ(ロケットストーブづくり、稲刈りなど)や季節ごとに行われるイベントも、日々の暮らしにエッセンスを与えてくれるアイデアが満載です。
昨年12月には「なるべく電気を使わないクリスマス会」が行われました。日中は屋外で屋台、フリーマーケット。社員だけでなく、零で家を建てた「すまい手さん」たちが腕を振るいました。
夜は薪・ペレットストーブの炎とキャンドルの灯りの中、参加者が持ち寄った料理を楽しむパーティーが開かれ、社員とお客様の交流の場になりました。最後はエコな品物や手作り作品のプレゼント交換会で盛り上がりました。
自然素材と伝統構法でできた家を誰にでも
零の家の特徴は、なんといっても「木の家」であることと、伝統構法の木組みで建てること。
木材はすべて国産のものを使用しています。
「日本では、山の木を伐採することを環境破壊だ、という思い違いがいまだ根強い。それは天然林の話なのです」と小野さんは話します。外国の木を切ることは環境破壊になりますが、逆に日本の人工林では十分に育った木が使われないことで林業が衰退し、森の荒廃が進んでいるという事実があるそう。「外国の安い木材を使うより、近くの山の木を使うことが環境のためでもあるし、当たり前の家づくりだよ」と小野さんは自信を持って言います。
手刻みによる伝統構法・木組みの特徴は、太く長い木材を長いままに使うところ。木材の「靭性」という粘り強さを活かします。短い木材を組み合わせて建てるより、耐震性に優れた構造を作ることができます。
「自然素材の木組みの家に、当たり前に住んでほしい」
高価なものだというイメージが消えない自然素材の家を、手の届きやすいものにしたいと考え、お客様の思いや予算を叶えるためにとことん相談します。手刻みではなく、プレカット(工場で木材を切断・加工すること)の木材を使うことも、予算に合わせた提案の1つ。建材はもちろん、国産の木を使っています。
「私たちが木の家を建てられるなんて、思ってもいませんでした」
ある建主が、引渡しの際にしみじみと言った言葉です。限られた空間を広く使い、家の一部は自分たちでDIYして費用を抑える提案があったからこそ、零で家を建てることを決断できたそうです。
「心を込めてつくった建物が、建主さんに渡るときが一番うれしい」。設計をした江本さんは話します。1人でも多くの人に、「当たり前」の素敵な空間を届けるために、社員一丸となって日々の仕事に励みます。
家族とともに成長し、変化していく住まい
仙台市青葉区八幡在住の堀内正裕さん、尚子さん夫妻は、いずれはマイホームを持ちたいと思いつつ、なかなかそこまで踏み切れてはいませんでした。
尚子さんが第一子の出産のために入院した際、隣の女性が社長の奥さん(子どもの誕生日は1日違い!)という偶然が重なり、4年前、零で「木の家」を建てました。
玄関を抜けると、すぐ目の前に薪ストーブがあります。仕切りがほとんどない間取りなので薪ストーブ1つですぐ温まります。国産木材の床は木の温もりが感じられ、「帰ってくると冬でも裸足になってしまうんです」と尚子さん。
子どもたちの成長とともに家具や間仕切りを変更でき、物を溜め込まないために収納スペースをあまり作らない間取りを提案しました。
尚子さんは当初、収納がほとんどない構造に疑問を抱くときもあったそうですが、「本当に必要なものだけを残すことにしています。その方がシンプルだし、必要なものは工夫して収納しなくてはいけない。それを楽しんでもいるんです」
また、ほかの壁とは違う特別な「土壁」をつくりました。設計した小野さんは「みんなで壁塗りをするという思い出の場所になるように」と、わざと何も塗らないままにしたそう。
壁塗りは、ワークショップとして堀内さんと小野さんの家族が裸足で踏んで土を練ることから始め、粘土のようになった重い土を手でペタペタ塗ったそうです。「家を住みよく変えていけるのが、何より楽しい。家と家族が一緒に成長しているみたい」と尚子さんは語ります。
すくすくと子どもが育つとともに、家に小さな傷が増えていっているそうです。「傷がつくことは決してマイナスではなくて、むしろ味が出ていると思うんだよね」と尚子さん。「時間がたつとともに変化し、味が出るこの家に自分の子孫でなくとも、誰かが住み続けてほしい。100年後に古民家カフェとかになってたらうれしいよね」と笑います。
自然エネルギーによる「暮らしづくり」
「放射性廃棄物の処分地も処分方法もないまま原発に頼り続けて、私たち大人は未来の子どもたちに対して顔向けできないよ」と小野さんは語気を強めます。
零では、国産木材と自然エネルギーを活用する暮らしを提案しています。今求められているのは、自然とともにある循環型で持続可能な暮らし方。零の家は、現在ほぼ100%が雨水利用や薪ストーブ、ペレットストーブなどの自然エネルギーを採用しています。このような家や考え方が広まっていくことで、未来の環境は確実に変わると信じて、一軒一軒の家づくりにのぞみます。
今後、建物の長寿命化や、少子高齢化の社会的背景などの事情から、新築の戸建て住宅は減っていくそうです。「そりゃ、新築が減っちゃ困るという会社としての事情はあるよ(笑)。けれどそれよりも、使い捨てになるような建築をなくしていき、ずっと使い続けていける家づくりを世の中に広めていく。それこそが零の使命だから」と小野さん。目の前のお客様の幸せと、100年後の子どもたちの笑顔のために、零は活躍し続けます。
ゼロ村プロジェクト始動!
泉ヶ岳の麓に、「ゼロ村」と呼ばれる場所があります。元は釣堀として使用されていた2600坪ほどの土地を小野さんが買い取り、零の提案する暮らしを、まだ家づくりを考えていない人にも味わってもらえるような場所にしようと絶賛準備中です。馬とヤギが2頭ずついます!
▼ゼロ村完成予想図
不便でも、体を動かしたり工夫したりすることで楽しく暮らすことができる。ゼロ村では「『ない』が『ある』暮らし」を提案しています。村では馬のいる暮らしをはじめ、様々な体験ができます。
例えば、五右衛門風呂。水は近くの川から滝の高低差を利用して引き込み、薪ボイラーで沸かします。
薪ストーブの熱で煮炊きし、排水はバイオジオフィルターというお手製の浄化槽で浄水します。砂利と水生植物の層をいくつか潜り抜けることで、ゴミを取り除き浄水できるのです。
「脱化石燃料の生活を、楽しんで続けていける場にしたい。もちろん100%できるわけじゃないけど、1人でも多くの人に、この暮らし方って楽しいよ!と伝えていきたい」とゼロ村牧場長の平井さんは話します。
「小さな小屋なら、薪ストーブさえあれば、真冬もTシャツ1枚で過ごすことができるよ(笑)」
馬がいて、山羊がいて、豊かな自然の中で暮らす。すでに乗馬プログラムなどはありますが、正式オープンは今年10月を予定しています。零では、ゼロ村を宮城のみならず東北、全国に広めていくことが地球を変えると信じ、我が道を歩み続けます。
実は、長期インターンシップ中!
実は、学生記者・阿部は一般社団法人ワカツクの「長期実践型インターンシップ」というプログラムの一環で、建築工房零でインターンシップ中なのでした!コードネームは、あべちゃん。
インターンシップでは、汲み取り不要で環境にやさしい「バイオトイレ」を設置するトイレ小屋の現場管理と(番頭さんの仕事です)、大工さんやボランティアみんなでDIYをしながら楽しんで小屋を建てるプロジェクト「ZERO JAM SESSION」を中心に進めています。
零の指針発表会場で発表する私。
事務所でミーティング中。ワカツクのインターンシップコーディネーターの簗瀬裕子さんが撮ってくれました♪
期間限定とはいえ、社会人の1人として働くのは本当に大変です・・・(笑)が、その分、学びや充実感はほかのどんな活動にも勝るなあ、と実感する毎日です。
零は「あたたかい」ところです。木造であることやペレットストーブの暖かさだけでなく、笑い声が響き、社員をニックネームで呼び合い、出掛けるときは「いってらっしゃい」と声を掛け合う。場自体が温かいなあと感じます。家づくりは「暮らしづくり」。暮らしづくりをしている人たちがムスっとした表情で仕事をしていたら、絶対に幸せな住まいにはなりません。
ちょうど、この記事の執筆中に、社員2人が立て続けに入籍をするというハッピーな出来事がありました!みんなからサプライズでケーキをプレゼント。せっかくなので2人で初の共同作業(?)あ、ご心配なく。お相手はそれぞれ女性です(笑)
社会的に意義があるから、地球環境に良い家づくりをしよう、と考えるのではなく、楽しい暮らしづくりを追求することが、人にとっても地球環境にとっても(社員にとっても!)幸せな住まいを生むヒケツなのでは、と感じました。
(あべちゃんのインターンシップはこれから3カ月続きます。内部取材もより深まるかも・・・?
続報はあるのか?乞うご期待です(笑)
従業員数 | 36名 |
資本金 | 2,000万円 |
住所 | 宮城県仙台市泉区上谷刈6-11-6 |
電話番号 | 022-725-2261 |
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