学生記者がお仕事の魅力を発見!仙台イケてる会社訪問
イケ社

“滑りにくい長靴”で全国トップシェアを誇る「弘進ゴム」

鎌田尭 鎌田尭
5,311 views 2014.12.15
鎌田尭 鎌田尭 東北学院大学3年(執筆当時)
魚市場や食品工場で働いている人はみんな「長靴」を履いています。普段何気なく目にする身近な物。小さい頃、外で遊ぶ際にお世話になった人も多いはずです。なんと仙台には日本全国に名をとどろかせるような長靴のメーカーがあるというではありませんか!そんなスゴイものづくりができる会社を「いぐする仙台」が取材しないわけにはいきません。果たしてどのような企業なのでしょうか!?

弘進ゴムってこんな会社

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「弘進ゴム株式会社」の本社は仙台市若林区河原町にあります。ほかに支店や出張所が全国に、工場が亘理町と富山県小矢部市にあります。創業は昭和10年。現在の社長の祖父がゴム長靴メーカーから独立して始めました。創業して間もなくゴム長靴の製造を開始。現在は社員322人が働いています。長靴以外にレインウェア、工業用のホースや防水シートなどのゴム・ビニル製品を扱っています。

取締役社長の西井英正さん(50)にお話を伺いました。

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仙台の企業魅力3つ

開発力と販売力でトップシェア!

食品加工場や魚市場、厨房、農業などで使われている専門業種向け作業用長靴は全国トップシェアを誇ります。食品加工場・厨房用の白い長靴に限れば全国シェアの5割近くが弘進ゴムの長靴です。年間売上は約100万足!「このあいだテレビを見ていたら、魚市場にいた人がみんなウチの長靴を履いてたよ」と西井さんは誇らしげです。

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なぜ弘進ゴムの長靴が売れるのか?その秘密は「開発力」と「販売力」にあります。

「開発力」では、白い長靴に使用される塩化ビニルを作る技術力を持っています。塩化ビニルの長靴はゴムと違い、油に強いという特徴があります。この技術を持っている会社は全国でも数社しかないそうです。

さらに靴底が水や油の上でも滑りにくいように設計されています。長靴のバリエーションはサイズや色を含めるとなんと1万点以上。長靴は関連会社の1つである中国・大連の工場で生産されています。

長靴のほか、摩擦に関するスペシャリスト「Dr.ホッキー」こと掘切川一男教授(東北大学)と開発した非常に滑りにくい厨房用の靴は、特許を取得し、テレビ番組でも取り上げられました。

「販売力」に焦点を当てると、全国7カ所の支店から各地に製品を供給することができます。60億円だった履物・レインウェア部門の売り上げを、76億円(2014年5月期)にまで伸ばした営業担当の努力も秘密の1つです。

「安さよりも商品の質を重視している」と西井さんは言います。近年では韓国や香港からの注文も入っているそうです。

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幅広い分野の製品ラインアップ

弘進ゴムでは長靴だけでなく、幅広い分野の製品を開発しています。そのひとつが工場や機械の部品などに使うホースです。車のパワーステアリングの為の油圧ホースを中心として、大手建設機械メーカーや自動車メーカーの部品を製造しているそうです。

さらに弘進ゴムでは「KSコーティング」という鋼管などに施す特殊な加工技術を持っています。鋼管を塩化ビニルのプールに漬けてコーティングする技術で、海水などの腐食や海洋生物の付着に強いのが特徴です。火力発電所などで海水を取水するためのパイプとして使われています。「壊れなさすぎて儲からないよ」と言う通り、約40年前にKSコーティングを施されたパイプが未だに状態を保っているといいます。

また同社ではレインウェアの技術を応用し、防水シートも扱っています。コンクリートが古くなったプールに防水シートを張ることで、新品のようによみがえらせることができるプール用防水シートや、プールの水を循環させることができる設備などの特許を持っています。

弘進ゴムでは創業当時から生産していた長靴を始め、ホースなどのゴム製品、雨合羽の生地に使うビニルシートの生産をしてきました。長年培ってきた技術により幅広い製品を開発することができるのです。

社員の積極性を会社が後押し

「社員がやりたいことに自分がブレーキをかけないようにしている。考えて行動しろと言っている」と西井さん。有名ブランドとコラボレーションした長靴やスニーカーなどの商品は「一般消費者向けの商品のイメージも強くしたい」という思いから社員が販売権を取ってきたそうです。

また、別の目的のために開発された製品を、新幹線の高架線に使用されている排水用ホースや有明海で使われている海苔を吸い出すためのホースにも使えないかと用途開発を進めて提案しました。ホースのサンプルを実際に使ってもらうなど地道な営業活動や絶え間ない努力が裏には隠されています。海苔用のホースは開発から10年、高架線用のホースは開発から20年の歳月を経て採用されました。

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2008年のリーマンショックで部品部門の売り上げが7割落ち込んだ際には、履物部門から「絶対に売るから在庫を持たせてほしい」と言われたそうです。売り上げは元の水準には回復していませんが、履物の販売に重点を置き順調に社全体の売り上げを伸ばしています。

「上から命令されて仕事するよりも、自分達で仕事を探して、自分達でやる方が本気になれる」。西井さんの思いや、高い開発力に裏付けされた自社製品への自信が社員の積極性を引き出しています。

社員にお話を伺いました。

女性社員(25) 入社4年目 経営管理部システムチーム
東北電子専門学校システムエンジニア科出身

経営管理部システムチームで製品の在庫管理やデータベース管理、経営管理などのオペレーション業務に携わっています。社内向けに納付書をパソコンで入力できるソフトも作っています。

仕事のやりがいについて「仕事をする人が便利になるようにプログラムを工夫しながら作ることができるから楽しい」と話します。ベテランの社員にパソコンなどの機器の使用方法を教えることが多く、覚えてもらうことが大変だそうです。そこでベテランの社員でも分かりやすいように紙などを使って説明していると言います。

社内の雰囲気について「ホワイト企業と言ってもおかしくない」と言います。有給休暇や産前・産後休暇・育児休暇が取りやすい環境だそうです。

「働いて良かった」と思われるような会社に!

弘進ゴムでは○○課長や○○係長とできるだけ役職名で人を呼ばないようにしています。課長を「チームリーダー」、係長を「サブチームリーダー」に名称を変え、なるべくお互いに「○○さん」と名前で呼ぶようにしています。名前で呼び合い、1つの「チーム」とすることで、お互いの結束力を強める試みをしています。最近では上司と部下の関係がフランクになってきているそうです。 

これまでは「オン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)」という仕事現場で直接指導する方法で人材を育てていました。時代の移り変わりにより、今年からOJTに加えて「メンター制度」を始めました。メンター制度とは、先輩社員が指導員や教育担当の役割を担い、社員を育てる方法です。さらに課長級の社員には、マネジメントに必要だと思われる勉強をしてもらっています。研修や通信教育で学習し、優秀修了した人の学費の9割を負担しています。

「働いて良かったと思われるような会社にしたい」と西井さんは力を込めました。

1つの製品を作り、使ってもらうためには多くの努力と時間が必要になるということを知りました。普段目にする様々な製品にも作った人や販売する人の思いが隠されているのではないでしょうか。多くの人が使っている製品には、多くの人が使う理由があります。

モノづくりをする企業だからこそ、自社製品に誇りを持ち、開発や販売ができるのだと思いました。

鎌田尭鎌田尭東北学院大学3年(執筆当時)
文章:名前(○大学○年)
写真:名前(○大学○年)
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弘進ゴム株式会社
http://www.kohshin-grp...
資本金100百万円
住所仙台市若林区河原町2丁目1-11
電話番号022-214-3011(代)