お仕事

伝統野菜を守りたい! 仙台朝市・今庄青果

根本 もっさん
1,743 views 2014.05.15

仙台の伝統野菜を守る八百屋・今庄青果さん。
今回は今庄青果・代表取締役専務の庄子泰浩さんに
八百屋というお仕事についてお聞きしました。
この記事では動画には収まりきらなかったお話も収録しながら、
今庄青果さんをご紹介していきます。

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saorisan井上
「本日は今庄青果の庄子泰浩さんにお話をお伺いします。本日はよろしくお願いします」※宮城学院女子大学4年。古着が好きなお洒落っ子。

shojisan庄子さん
「はーい、よろしくお願いします」
※今庄青果代表取締役専務。仙台朝市の名物八百屋さん。

八百屋さんだから出来ること


井上「最近、若い人の中にはスーパーの野菜を購入することが増えているということなのですが、スーパーにはない八百屋さんならではの魅力ってなんですか?」

庄子さん「スーパーってのは自分で品物を選ぶでしょ? だから本当は知識がなきゃいけない

井上「あぁ」

庄子さん「品物に対する知識がなければ良いものと悪いもの選べないでしょ? 我々はここにいて商品を挟んでお客さま・僕らと相対して売るから、ここで確認ができるわけさ」

井上「なるほど」

庄子さん「だから分からないことがあったらここで聞ける」

井上「お客さまと対話をしながら、ものを提案していく感じなんですね」

庄子さん「そう、だから全部がライブなのね。『相手の要望に対してどのように答えていくか』というのが僕らの仕事で、野菜を売るというのは手段のひとつ。『相手の役に立っていく』というのが僕は仕事だと思っているんで。だからうちの野菜食べると元気になるんだよ。本気で思ってるからね」

ジャガイモ1つでも奥が深い!

庄子さん「うちはね、ジャガイモだけでも実は7種類置いてある」

井上7種類!?

庄子さん「そう。肉じゃがは作れる?」

井上「はい!」

庄子さん「肉じゃがってジャガイモの形残る?少し煮崩れる?」

井上「ちょっと崩れます」

庄子さん「イメージそうだよね? だから固いジャガイモ、煮崩れないようなメークインとか、そういうジャガイモ使っちゃうと、あのほろほろ感がなくなるんだよ」

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今庄青果さんのメークイン

庄子さん「メークインってのはこういう、少し長っ細いやつ。そして水分が多くて固めなんださ。だから煮崩れをしないから、カレーライスの上に形をきちんと残したかったりするときにこういうジャガイモが必要になる」

井上「へ~」

庄子さん「それからこっちが男爵イモ。これがちょうどいいね、肉じゃがにはね」

井上「煮崩れますもんね!」

庄子さん「そう、煮崩れるやつね」

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今庄青果さんの男爵イモ

庄子さん「肉じゃがは他に何入れる?」

井上「他に・・・ニンジンと、タマネギ」

庄子さん「そうタマネギ。タマネギも、新玉ねぎと古玉ねぎってあるじゃない。古玉ねぎは、皮が金色のやつ」

井上「金色、ですか?」

庄子さん「そう、金色だよ。ゴールデン」

井上「あー、たしかに」

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庄子さん「これを古玉ネギって呼んでるんだけど、加熱すると美味しくなるから、肉じゃがにはこっちを使ったらいい。新玉ネギってのは白玉ネギって言われてて、オニオンスライスだとか、生で食べるのに適している。あれは加熱してもあまり甘くならない。溶けちゃうんだよね。だから加熱したときに甘くなるようなものを肉じゃがには使うべきだよね」

井上「うん、うん」

庄子さん「だからなんでもいいわけじゃないと思う。もちろん新玉を使って肉じゃがを作ってもいいんだけど、加熱時間をぐっと抑えてもらうといいかな。なんてことをお話していくわけだよ」

野菜にだって部位がある!

庄子さん「もっと面白く言うとね、お肉に、すね肉とかフィレ肉とかロースとか部位があるよね? 野菜にも部位がある

井上「あるんですか!?」

庄子さん「当たり前じゃないですかぁ!」

井上「ええっ(笑)」

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庄子さん「たとえばキュウリならね、上の部分の緑色の濃いところと、下の柔らかいところ。どっちが女性は好きだと思う?」

井上「えー・・・」

庄子さん「やっぱり柔らかい方。下の方には水分が多くて種があって柔らかい。そして色がちょっと薄い。上の濃い方は苦味があってちょっと固いんだ」

井上「へぇ!」

庄子さん「だから上の方をスライスしていきながら男性に、下の方の柔らかいところを女性と子どもたちにあげると、好き嫌いが少なくなるんだよ」

井上「ちょっとの工夫で全然違うんですね」

庄子さん「そう。だからキュウリっつっても1本丸々同じ扱いじゃなくて、その部位をきちっと考えながら使っていくと、食べる人のこと考えるでしょ?」

井上「うん、うん」

庄子さん「だからお料理に合わせて食材を選んでいく。それから部位を使い分けていく。食べる相手によってきちっとそれを考えていく。こういう話、学校じゃ教えてくれないでしょ?」

井上「はい」

庄子さん「八百屋から聞いてくれないとね」

井上「そうですね(笑)」

世代を越える知恵を紡ぐ場所

庄子さん「そしてね、こういう知恵を僕に与えてくれるのが朝市のお母さんやおばあちゃんたち。仙台朝市はね、3世代が一緒にいる場所なんだよ」

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庄子さん「八百屋さんの仕事っていうと、僕ら朝4時に市場に行くんだよ。大変だと思うでしょ? ところが市場に行くとキャベツが100ケース10段10列できちんと並んでいる。4時から行く僕も大変かもしれないけど、その僕を少しでも助けてくれるような仕事をしてくれている人がいる」

庄子さん自分のことだけ考えて進めていくのは作業。仕事、『働く』ってなると、それはやっぱり『人のために動く』ってことだから、自分が動くことによって次の人がまた動きやすくなるように、それを止めないように流してかなきゃいけない。まさにね、ここ(仙台朝市)はそういうところ」

働くことは生きること

井上「庄子さんにとって『八百屋で働く』ってどんなことですか?」

庄子さん「そりゃあ生きてくってことだべな」

井上「生きてく・・・」

庄子さん「そう、生きていくこと。一生こうやっていくね。八百屋さんって定年ないんだよ。心が折れなけりゃやってける。だからこうやってね、おいしさを伝えて、相手のことを思って、腹が立ったらより笑顔で! 『この野郎』って言いたくなったら『へいらっしゃい!』ってね(笑)」

井上「(笑)」

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庄子さん「うん、でもそうやっていけたらいいな。高望みはしない。大きい家に住みたいとかマンション欲しいとか高級車乗りたいとか、そんなこといい。普通にこの仕事があと30年できたらいいな。それが八百屋の仕事だと思うんだよね。町の中にいつもある」

井上「本日は今庄青果の庄子泰浩さんにお話をお伺いしました。庄子さん、どうもありがとうございました」

庄子さん「はい、ありがとうございました。お騒がせ(笑)」

井上「とんでもないです(笑)」

取材レポーターからの声

saori井上さおり
今庄青果の庄子さんのお話には八百屋さんの魅力がぎゅっと詰まっていました。たくさんのお話の中に、野菜一つひとつに込められた愛情がひしひしと伝わってきました。お客さまとお話しして、その野菜にぴったりの調理法まで教えてくださるそう。『へいらっしゃい!』の声を聞きに、また今庄青果さんまで足を伸ばしてみようと思います!

「今庄青果」庄子泰浩さんインタビュー

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