【農業】シャキシャキ食感!仙台セリの伝統とこれから「セリ農家の大内さん」
2014年3月に一般社団法人ワカツクと河北新報が主催した記者インターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。参加学生が班ごとに取材した記事を紹介します!
セリ作りに込める地元愛
シャキシャキとした歯ごたえ、独特の野趣ある香り。
セリのうまみを根っこまで味わい尽くす「セリ鍋」が近年、仙台でブームだ。
市内の居酒屋が競って提供し、予約しないと食べられないほどの人気になっている。
「地元の伝統野菜を、みんなが食べてくれるのはうれしいねえ」
名取市下余田で「仙台セリ」を栽培する大内繁徳さん(50)は顔をほころばせた。
8代続く農家の長男。
地区の芹出荷組合の組合長として、40の農家を率いる。
▲「これからも長く愛されるセリを育てたい」とほほ笑む大内さん=3月中旬、名取市下余田
宮城県のセリ出荷量は全国1位を誇る。
中でも下余田地区は、東京ドーム2個分のセリ田が広がる県内屈指の産地だ。
四季を通じて一定の水温を保つ澄んだ地下水が、良質なセリを育む。
2011年の東日本大震災では、沿岸部にある排水設備が津波によって壊された。
セリ田の水を下流に流せなくなり、下がった水温の影響でセリの緑は色を落とした。
それでも組合農家は栽培を続けた。
震災直後の「非日常」の中で、地元のセリを食べて「日常」を感じてほしかったからだ。
「見栄えは劣るが、味も栄養価も大丈夫」
簡素な食事が続いていた避難所に配り、喜ばれた。
名取市内の仮設住宅にも2年間、年末年始に届けた。
地元の人々にセリの存在を再認識してもらうきっかけとなった。
組合の働きかけは、地産地消の新たな流れを生んだ。
料理の脇役が、セリ鍋で一気に主役として浸透したのはその証。
地元のパン屋と仮設商店街の惣菜屋からも注文が入り、「セリ入パン」「セリ入り春巻き」が誕生した。
一面緑の美しいセリ田が広がる下余田地区から車で5分。
いまだ、仮設住宅が立ち並ぶ。
400年の歴史を誇る伝統野菜の作り手として、何ができるのか―。
組合長は信じる。
「震災以前と変わらず栽培し続けることが復興の一助になる。できることを地道に続けるだけです」
ブームでは終わらせない。
立田祥久(東北大3年)
中澤直哉(東北学院大3年)
酒井春佳(広島大3年)
竹林美歩(宮城学院女子大3年)
この記事を書いた人
- 一般社団法人ワカツクと河北新報社が主催するインターンシッププログラム「記者と駆けるインターン」。学生たちがチームを組んで、仙台の中小企業や団体を取材した記事を紹介します。ときに励まし合い、ときにぶつかりながら、チームで協力して取り組んだ“軌跡”をお楽しみに♪
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