子どもと寄り添う
「何かできることは、と考えた時、それは僕にとって教育。震災遺児支援だと思いました」
家庭教師のアップルを運営する畠山明さん(44)は自然体でそう語る。
▲継続することの大切さを話す畠山さん=仙台市青葉区
家庭教師のアップルは仙台市内に7つの教室を構えており、口コミによる生徒の入会数が2,000名を超える会社だ。畠山さんは震災直後から今日にいたるまで、家庭教師のアップルのスタッフやボランティアと共に震災遺児への教育支援をつづけている。
現在は石巻市や仙台市に在住している学生9名と、岩手県から東京都へ移り住んだ学生1名の計10名に対して家庭教師の派遣を行っており、その年齢層は小学生から高校生までと幅広い。2013年9月現在、9名の震災遺児支援を終えている。
家庭教師の派遣は週に1度行い、担当となる家庭教師は基本的に専属となる。この方式で遺児支援を続けているのには理由がある。家庭教師のアップルでは元々、教師と生徒の「1対1」で学習指導を行っており、子どもに寄り添いながら学びを提供し続けている。震災遺児へ「1対1」での学習を提供できれば、今まで蓄積してきたその経験を活かせるのではないかと考えている。
「自分達が得意とする方法で支援することが被災地にとって一番迷惑をかけず良いのではないかと考えました」。畠山さんのその考えが震災遺児への支援に深みを生み出すことになる。
「私もお姉さんみたいになりたい」
この言葉は、当時高校生だった震災遺児の女の子が、家庭教師として派遣された大学生のお姉さんに言った言葉だ。女の子は、勉強の合間にお姉さんと話を交わすうち、次第に心を開いていき、夕食を共にするよ
うになった。そして、女の子は徐々に立ち直っていく。
「体育教師になりたい」
現在女の子は高校を卒業し、その新たな夢を追い続けている。
家庭教師の派遣は学習支援だけに留まらず、何もかもやる気を失っていた女の子の心に夢を与えるきっかけを作り出した。
畠山さんは最後にこう締めくくった。
「遺児支援を必要とする子がいなくなるまで、今と変わらず支援を継続し続ける」