ゆっくり確実に歩み続ける、NPOを支えるNPO
震災後もぶれずに情報提供
東日本大震災の発生から間もない2011年4月。メディアの話題は震災一色だった。市民活動情報誌「月刊杜の伝言板ゆるる」4月号でも義援金や災害支援団体への募金の情報を発信した。しかし最後の2ページには、いつも通りNPO団体による開催講座情報を掲載。未曾有の災害が起きても、支援している団体に必要な情報を伝え続ける信念はぶれなかった。
「月刊杜の伝言板ゆるる」の発行元である、中間支援団体「杜の伝言板ゆるる」は1996年12月に発足された、NPOを支援するNPO。発足の半年後から、月刊フリーペーパーで、NPOによるボランティアや講座の案内をしている。震災後の初発行となる4月号は、発行部数を毎月8000部から10000部に増やし、公共施設や自治体に加え、希望があれば仮設住宅にも配り始めた。
また、同団体は、それぞれのNPO団体が確かな事業展開ができるように、スキルアップ支援にも力を入れてきた。助成金申請の書き方講座、マスコミを味方につけるプレスリリースの勉強会、組織の成長に伴って煩雑となる会計手法の伝授…。「ゆるる」のサポートが、NPOの誕生を支え、進化を助けてきた。
地元に根差したNPOを支援
「震災以外たいしたことじゃない、と捉えるのは違うな、と」。
杜の伝言板ゆるる代表理事・大久保朝江さん(65)は、震災時もいつも通りの情報を載せ続けたことについて、そう語る。
真剣なまなざしで語る大久保朝江さん=8月27日仙台市宮城野区 宮城NPOプラザ
宮城県は内陸部で被害を免れた地域も多く、普通の生活を送る人も多かったのに関わらず、震災に直接関係する問題だけが重要であるかのようだった。例えば、「被災地の問題」として扱われた仮設住宅の高齢者の孤独問題や被災地の過疎化は、前々から問題になっていた介護問題や少子化などに関連している。
被災する、しないにかかわらず、そこにある問題に一緒に向き合う。それが出来るのは、地元で立ち上がった、地域に根差したNPOだ。その仕事に注目・発信し、支援していくことが「ゆるる」の担う役割だと大久保さんは考える。
ゆっくり、少しずつ。続けてなんぼのNPO
「せんだい杜の子ども劇場」も「ゆるる」から支援を受ける団体の一つだ。任意団体からNPOに移行する際、申請書類を書くのを助けてもらった。最近は、職員の雇用に伴う各種保険について助言を受ける。
副代表理事の有坂紀美江さん(55)は「励まされ、時には叱咤もされてしまうんです。とても頼りになる『NPOのためのNPO』です」と感謝する。
継続すること。これが大久保さんのこだわりだ。「地元の人が立ち上げたNPOじゃないと、いつかボランティアの人が帰ってしまう。私たちは、継続性のある活動に注目して支援し続けたい。続けてなんぼの世界だから」と大久保さんは語る。
2014年1月、「月刊ゆるる」は200号を迎える。NPOの継続を支えるために、「ゆるる」の名前の由来の通り「ゆっくり、少しずつ」歩み続ける。
取材を終えて
取材中、大久保さんの信念を感じる言葉に「この言葉を記事に入れたい!」と何度も思いました。その思いをいかに分かりやすく伝えるか、どうしたら予備知識の少ない読者に「NPOを支援するNPO」 を分かりやすく説明できるか。悩みながら執筆しました。直接スポットライトが当たらなくても、縁の下の力持ちとして社会を支える方々がいることに気付かされました。取材後に雑談した時に感じた大久保さんのあたたかさや「お母さん」のような強い優しさも記事から読み取っていただくことができたなら幸いです。
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