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技術やチーム力でおいしさを極める!南三陸の老舗かまぼこ店「株式会社 及善商店」

波多野 里南 波多野 里南
277 views 2019.07.04
波多野 里南 波多野 里南 東北学院大学
春休み(2019年2月~3月)に、南三陸町の広告制作会社でインターンシップをしてきました。その活動の一環で、お世話になった地元の企業です。何度かインタビューし、とにかく熱い思いでかまぼこ作りをされている従業員の皆さんの姿を見て、「きちんと取材して記事にしたい!」とずっと思っていました。そこで、取材してきました。

及善商店ってこんな会社


JR気仙沼線BRTの「志津川(しづがわ)駅」から車で約10分。

山を少し登り、そして少し下った先に、突如現れる工場が南三陸町のかまぼこ店「及善(おいぜん)商店」です。

私が立っている場所のちょうど後ろが製造ライン。工業見学ができ、できたてのかまぼこも食べられちゃうんですよ!温かいかまぼこは、食感がふわっふわでとてもおいしいです。

創業は、明治13年。今年で139年目と、長い歴史があります。始めは“かつお節店”でしたが、2代目からかまぼこを作り始め、正式に“かまぼこ店”となったのは4代目の時。今の社長は5代目です。

南三陸町は、2011年3月11日に発生した東日本大震災により、甚大な被害を受けました。及善商店も、大きな津波によって会社や工場が流されてしまいました。そこで、隣の登米市に店舗と臨時の工場を作り、営業を続けていました。「仙台に行かないのか?」という同業者からの声もあったと言います。しかし、創業の地・南三陸町へ戻る決断をし、今もこの地で営みを続けています。

今回は、専務取締役の及川善弥さん(38)に、じっくりとお話を聞いてきました。

仙台の企業魅力

長年培われてきた“技術”

創業139年という長い歴史から培われた技術は、今もなお受け継がれ、日々進化しています。
かまぼこの原材料は、主にスケトウダラという魚のすり身。すり身は扱いが難しく、気温や湿度によって状態が変化してしまう非常にデリケートなものです。熟練した従業員が、わずかな変化に対応し微調整しながら、かまぼこ作りに必要不可欠な調味料の配合を行っています。

そうした技術の結晶ともいえるのが、主力商品の1つ「リアスの秘伝」です。及川さん曰く「及善の最高傑作」だそう。

下の写真の左が「リアスの秘伝」で、1つ64グラムあります。右のベーシックなかまぼこ(特製)は34グラムなので、なんと約2倍の重さがあります。工場で作ることのできる、ギリギリかつ最大の大きさ・厚さに挑戦したものです。

大きいだけでなく、素材にもこだわっています。スケトウダラのすり身に、高級魚「キンキ」のすり身をブレンド。噛めば噛むほど、キンキの上品で優しい味が口いっぱいに広がります。

かまぼこ業界では、柔らかさと弾力を兼ね備えていることを“しなやか”だと表現するそうです。「リアスの秘伝」の食感は、非常にしなやかです。
このリアスの秘伝は、4代目の社長が構想しましたが、完成させる前に亡くなってしまい、後を継いだ今の5代目が完成させました。品評会では、全国1位に輝きました。

また、伝統的な「細工かまぼこ」も作っています。上の写真の細工かまぼこは、新年号を記念して「令和」の文字をあしらったもの。文字も花も、もちろん魚の目や尾びれの模様に至るまで、全て手書き!この技術はスゴい!

熟練の限られた人のみ作ることができ、現在は及川さんを含む数人だけですが、今後も途切れることなく続けていきたいそうです。

工夫を凝らした“工場”

写真の工場の中には、ありとあらゆる工夫が散りばめられています。

例えば、上からいくつも伸びているホースのようなものは動かすことができ、ここから冷たい風が出てきます。従業員の皆さんが暑い夏でも快適に作業できるように、このような設備があります。

また、床は少し斜めになっていて、水が自然と排水溝(銀色のフタの中)に流れていくようになっています。かまぼこを作るための機械がたくさんありますが、電気ケーブルなどは一切、床にありません。漏電や従業員が引っかかって転ぶのを防止するために、すべて天井にあります。

私が一番驚いたのは「クリーンルーム」と呼ばれる部屋。この部屋は、工場で作られたかまぼこを包装する場所です。どの部屋よりもきれいな空気が流れ込んでいて、簡単な医療外科手術ができるくらい清潔な環境になっています。
さらに驚くべきは、“気圧”へのこだわり。気圧が高めに保たれているため、部屋の出入りや窓を開ける際も、クリーンルームの空気が出て行くだけで、他の部屋の空気は入ってきません。このようにしてきれいな空間を保ち、かまぼこを包装しています。

他にもさまざまな工夫が施されていますが、すべては“おいしいかまぼこ”を作ることに繋がっています。

従業員の“チーム感”

従業員の皆さんの「良いものをみんなで作っていこう!」というチーム感が、会社の強みです。及善商店の「行動指針」は、及川さんが従業員の皆さんに直接、聞き込みをして作りました。みんなの思いが詰まった行動指針を掲げることで、働くことへの意識をより高めています。

行動指針の1つに「チームワークを大切にし責任をもった行動をする」というものがあります。その言葉の通り、専務の及川さんと従業員の皆さんが、対等に付き合える関係性が及善商店にはあります。

震災後は「被災地を応援しよう」という風潮が強く、営業を再開すると予想を上回る売り上げがありました。しかし、及川さんは「本当にこのままで良いのか?」と不安になり、従業員の皆さんに厳しい会社の状態を包み隠さず伝えたと言います。

商品企画の段階では、及川さんが「こういうものを作ってみたい!」とプレゼンすると、従業員の皆さんはただ意見を聞くだけでなく、自分の意見をぶつけてくれます。お互いを信頼し、認めあって「よいものを作りたい」という思いを共有しているからこそ、意見をぶつけ合える社内環境ができています。

おいしいかまぼこを作るために…及川さんの熱い思い

「かまぼこが好きすぎて嫌い」。
そう語る及川さん。もちろん、この言葉には続きがあります。

及川さんは、5代目の社長の息子。小さい頃から、当たり前のようにかまぼこがそばにある生活でした。大学では海洋学部に進学。かまぼこを科学的に分析し、研究しました。
実家にはかまぼこを作ることのできる環境があり、大学で研究したデータもあります。「こんなにかまぼこに向き合っている人は、なかなかいないのではないか?」とだんだん自信へと変わり、それと同時にかまぼこへの熱意も増していきました。

「人に喜んでもらえないかまぼこは、かまぼこじゃないんだよ」。
及川さんにとって、“おいしそうにかまぼこを食べている顔を見ること”が、1番の幸せだと言います。そのため、ただかまぼこを作るのではなく、食べた時に幸せになれるようなかまぼこを目指しています。
利益を求めて、原材料費を抑えたかまぼこを作ることもできますが、及川さんは「それはしない」と言います。「おいしい」と言ってもらえるかまぼこを作るために、長い歴史の中で受け継がれてきた商品だけでなく、新たな商品づくりにも日々挑戦しています。

「おいしいかまぼこを作るためなら、同業者でも他の業種の企業でも、関係なく協力してやっていきたい」と及川さん。会社が培ってきた技術も、決して独り占めしようとは思っていません。必要があれば、同業者にも教えていくと言います。
東日本大震災から8年が経ち、「被災地を応援しよう」という動きも、以前ほどではなくなってきました。かまぼこ業界では、震災以降は売り上げが回復していたものの、復興需要は一時的で、現在は厳しい状況が続いています。
「踏ん張っていくためにはチームワークしかない。厳しい状況だからこそ、他の企業や他の業種とも協力しあって、かまぼこ業界を盛り上げていきたい」。及川さんは、そう前を見据え、語っていました。

かまぼこに熱い思いを抱き、“おいしいかまぼこ”を作るためならライバル企業でも協力することをためらわない、その姿勢が“粋”だなと思いました。「独り占めしていても良いことはないし、他の企業がおいしいかまぼこを作れるようになったなら、それでいい。皆がその技術でかまぼこを作っている間に、また新しい商品を考えられる」と及川さんは話していました。この言葉は、自分たちの技術に絶対的な自信がないと出てこないなと気づきました。
家族のように従業員みんなが信頼し合い、高め合いながらかまぼこ作りのできる環境があるからこそ、この自信やかまぼこへの誇りが生まれているのだと思います。率直に、格好良いなと感じました。
また、良いものを作るためには、自分で努力するだけでなく、他人の力を借りるという選択肢を取ることも大切だと学びました。「1人ではなく、同業者やいろいろな人たちの知恵を借りて、踏ん張っていきたい」とお話ししていたのがとても印象的でした。私は人に頼ることに非常に腰が引けてしまって、あまり得意ではありませんが、今回の取材を通して人に頼ることの大切さに気づくことができました。

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文章:波多野 里南(東北学院大学3年)
写真:伊藤 優宏(東北大学4年)
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株式会社 及善商店
https://oizen.co.jp/

この記事を書いた人

波多野 里南
波多野 里南
東北学院大学
花や空などの自然が大好き!写真を撮るのも好きです。良い香りのものを集めることが趣味です。アロマキャンドルから柔軟剤にいたるまで、私の好きな香りを常に探し求めています(笑)