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消防士をやめてIT会社を起業!?「株式会社フロム・インパクト」尾形哲也さん

三浦 侑紀 三浦 侑紀
1,535 views 2015.10.13

消防士をやめてIT会社を起業!?

9月29日のいぐするテラスでは、株式会社フロム・インパクト(仙台市青葉区本町)の社長、尾形哲也さんにお話を伺いました。フロム・インパクトはWEBマーケティング業に特化した会社。東日本大震災後の2011年6月に、尾形さんが起業しました。WEBマーケティングってなんだか専門的で難しそうですが・・・なんと、尾形さんの前職は消防士なんだそう!どうして会社を立ち上げたのでしょうか。尾形さんの「働く」に迫ります。

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見えないお客さんを呼び込む仕事

「WEBマーケティングって何だか分かる?」
尾形さんの聞きなれない言葉に、参加者のほとんどがうつむき気味です。
「知りたいワードをGoogleのような検索エンジンにかけたとき、最初にどのページをクリックする?1番初めに目に入るページしか見ない人がほとんどじゃないかな。でも、検索されたページは沢山あるよね。それでは、あまり見てもらえないHPが出てきてしまう。そこで、僕の会社の出番というわけなんです」。
尾形さんの会社、フロム・インパクトは、請け負う会社のページがキーワード検索で上位に表示されるよう工夫、調整したり、消費者の購買意欲をそそるHPデザインを提案したりする仕事をしています。
「社会にはそんなニーズがあるのか!」と参加者は驚きを隠せません。

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「対面ではなくWEBを介した目に見えない誰かを相手にしている仕事。お客さんがどんな気分で、どんな状況で、WEBページをのぞいているのか――。想像に想像を重ねています」。と仕事への熱意を語ります。

消防士から転身!会社を立ち上げる決断

 学生時代はサッカーの強豪校で鍛錬していた尾形さん。大学を卒業後は体力を活かして人の命を救いたいと、石巻市で消防士の職に就きました。ところが働いているうちに、努力と報酬が直接結びつかない点や、庶務の多さにもどかしさを感じるようになったといいます。自らの可能性を模索する中、尾形さんはアフィリエイトという広告業に出会います。
「アフィリエイトは、依頼されたキーワードを検索エンジンの上位に表示させることで、企業から報酬を得られる仕組みになっています。当然、工夫を凝らせば凝らすほど成果は上がる。地道な努力が結果に結びつく感覚は大好きなサッカーに似ていて、自分の性格にも合ったのか、気づけば没頭していました」と当時を振り返ります。
一日中パソコンと睨み合いながら、アフィリエイトでの業績を伸ばそうと試行錯誤を重ねつつ、同業社長に会うことを通して、起業に必要なノウハウを蓄積していった尾形さん。家族の後押し、支えもあり、アフィリエイトをはじめとするWEBマーケティングを商いにしていくことを決心しました。

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「公務員をやめることに対して不安がなかったと言えば嘘になる。でも、喜び、達成感は辛さを味わってこそ。日々何かに挑戦して、成長を実感していたいという思いから、一歩を踏み出せました」。尾形さんのチャレンジ精神あふれるお話に、参加者は目を丸くしながら引き込まれていました。

イキイキと大人が働くことのできる社会へ

『WEBを使って社会問題を解決し、誰もがイキイキと働ける社会を実現したい―』
そんな尾形さんの思いから、フロム・インパクトでは新しく、労働をめぐる問題の改善を目的とした求人メディアを立ち上げました。

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▲株式会社フロム・インパクト提供

それが『看護のココロ』という看護師の求人サイトです。
社会には、出産や子育てのために一度現場を離れた看護師が大勢います。しかし、求人が探しにくい、労働環境がわかりにくいなどの難点から、看護の現場は深刻な人手不足の状態にあるといいます。「看護のココロ」では、看護師求人と現場で働く看護師の口コミを一度に見られるという新しい求人のカタチを実現。資格を持っている人が、自分に合った職場を探すことのできるツールとして機能しています。
「今後はインターネットを活用し切れていない中小企業に力を貸して、求人情報の発信を活発にしていきたいですね。」
尾形さんの社会を変えていこうという試みはまだ始まったばかりです。

自身が『やりがいを持って楽しく働く』ことを大切にしている尾形さん。参加者の「どうやって不安や辛さを乗り越えるのですか?」という質問に対し、二種類の『楽しさ』の定義についてお話してくださいました。
「一つは『快楽』。これはTVを見たり音楽を聞いたり、自分の努力とは関係なしに得られるもの。もう一つは『喜び、達成感』。これは、何か辛いことや苦しいことを乗り越えないと味わえないもの。僕は、毎日の挑戦の中で『喜び、達成感』を味わえる人生にしたい。だから、不安や辛さをポジティブに考えることができるんです」。

いぐするテラスの取材を終えて

WEBマーケティングというパソコンに向き合う作業が多い仕事の中でも、そのとき一つひとつの出会いや仕事の機会を大事にする尾形さん。消防士を経験したからこそ知り得た「命の尊さ」によって、毎日を悔いなく生きようという前向きな姿勢は支えられています。

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今回のお話の中で特に印象に残ったのは「仕事のやりがいに対する感度を高める」という言葉。どんな仕事に対しても、やりがいを感じられるかどうかは自分の受け取り方次第だということに気づかされました。私は新聞記者になる夢を叶えるための第一歩として、いぐする仙台で学生記者を始めました。まだ大学の勉強やアルバイトとの両立が不安で本格的に活動できていませんでしたが、辛くて大変なことを乗り越えてこその「達成感」を味わいたい!と、自発的に関わっていこうと思えました。尾形さんに背中を押してもらった、そんな今回のいぐするテラスでした。

画像提供:株式会社フロム・インパクト
文章・写真:東北大学2年 三浦侑紀

いぐするテラス参加者の感想

仙台青葉学院短期大学 山尾 栞里さん

yamao消防士からIT関係に転職をしたという尾形さんは、震災をきっかけに「他に社会のために何かできることはないか」と考え、会社設立を決心したそうです。「不安より挑戦したいという思いの強さが上回った」ということで、不安も楽しさに変える尾形さんを見習いたいと思いました。私は不安の方が大きく、新しいことに挑戦しない性格だと気づいたので、見方を変えて楽しいと思えるようになりたいです。
特に「自分の人生はRPGのようで日々前進していくことが楽しい」という言葉や、「喜びに近い楽しさは、辛いことを乗り越えてから得られる」というお話が胸に残っています。困難や辛いことに立ち向かわなければ、本当の楽しさや喜びは得られないのだと思いました。
いぐするテラスに参加し、普段曖昧にしか考えていない進路についてより深く考えさせられました。自分はどんな業界に興味があるのか、自分に向いている仕事はどんなものかなど、積極的に考えていきたいです

仙台青葉学院短期大学 大内 七海さん

ouchi尾形さんに学生時代のお話から公務員を経て、WEBマーケティングという職業に就くまでの過程などをお聞きしました。終始いきいきとした眼差しで話されていて、仕事に真剣で、いつも前向きな方だという印象を受けました。
辛いことと仕事がイコールになっていた私にとって、実際に自分の好きなこと、楽しいと思うことを仕事としている方にお会いできたことで、まったく新しいプラスの考え方が持てた機会になりました。「1割の好きのために、9割の我慢が出来るかどうか」という言葉が印象的でした。自分自身がやりたいと思って選んだことだからこそ、辛いことや投げ出したくなることも乗り越えていけるのだと感じました。

仙台青葉学院短期大学 R.Kさん

WEBマーケティング会社代表の尾形さんに話を伺いました。そのお仕事は目に見えないお客様がターゲットという、とても最先端で、新鮮な印象を受けました。
お話の中で「今を1番楽しく」「さらに成長したい」という言葉がありました。尾形さんはその思いがあるからこそ、会社の経営理念にも掲げられている「イキイキ生きること」に繋がっているのだと考えました。ただ漠然といい会社に就職したいと考えていた私にとって、その言葉は強く残っています。受動的に授業を受けるのではなく、その中で楽しさを見つけ、成長に繋げていくという意識が芽生えました。

尾形さんのお話をお聞きして物事の受け取り方が変わり、そのことによって以前より視野が広くなったように思います。同じ物事でも受け取り方ひとつでこんなにも変わるのだ、と日々実感しています。様々な観点や視点から客観的な考えを示せるようになりました。次回以降のいぐするテラスでもどんどん自身にない考えや感性を吸収していきたいです。

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