建築業界は理系だけの世界じゃない!?「有限会社 田中事務所」徳田大輔さん・菅原智子さん
建築業界は理系だけの世界じゃない!?
9月8日のいぐするテラスでは、有限会社田中事務所 総務人事部主任の徳田大輔さんと今年4月からの新入社員、菅原智子さんにお話を伺いました。田中事務所では、電気、空調、水回りのような建築設備の設計や材料、費用の計算を行っています。設計や計算って、なんだか数字がたくさん出てくる理系のイメージでしたが、徳田さんは法学部、菅原さんは文学部の出身!建築って理系の世界じゃないの?
図面から知る建築設備の仕事
「これは、ある建物の空調を設計した図面です」。
そう言って徳田さんが広げた一枚の紙には、建物の輪郭の中に、配管を示した線がびっしり。田中事務所は、業者が施工する前の電気や空調の設備設計、必要な材料とその費用を計算する「積算」が主な業務です。設計図は1フロアにつき1枚以上。同じ建物でもフロアによって用途が異なるので、それに合わせて設計を変えなければなりません。普段見ている建物の中身がこんなに複雑なのかと興味津々の参加者たち。
建物を一棟建てるのにも、工事全体を取りまとめる「ゼネコン」をはじめ、多くの建設関連の企業が協力する必要があります。建物は外観や内装だけでなく、建築設備も整わなければ、成り立ちません。「様々な企業の人と関わりながら、協力して進めるのが醍醐味ですね」と語る徳田さん。
先入観に縛られて、自分の可能性を狭めていた時期も
はじめから建築業界に興味があったわけではない菅原さんが田中事務所に入社したのは、先輩に相談しやすい環境だと感じたことが決め手でした。歴史が得意で、大学時代は、文学部歴史学科でアメリカ史を専攻していました。特にやりたいことも見つからないまま、大手企業の営業職を中心に就職活動を始めましたが、面接で「やりたいこと」を尋ねられても上手く答えられず、内定をもらえない時期が長く続きました。そこで、一念発起し、自己分析をやり直したことで「人間関係が良い職場で働きたい」という軸を発見。インターンを経験することで、働いている人との相性や職場の雰囲気を知りたいと考えたときに紹介されたのが田中事務所でした。インターンでは必要な材料や費用を算出する積算も経験しました。知識が無いまま手探りで仕事を進める状況に不安もありましたが、頼りになる職場の先輩の支えもあって、図面を見ながらの作業にも段々と手応えを感じるようになりました。インターンを経て就職した今、「文系出身の自分が建築の積算なんてできないと思っていたけど、経験してみないとわからないと感じました。就職活動の前半は、大卒=営業という先入観に縛られすぎていたかもしれません」と振り返ります。「とにかくまだ始まったばかりなので、今携わっている積算を極めて、自信を持って仕事ができるようになりたいです」と目を輝かせて語っていました。
大学時代には法曹界を志していた徳田さんも就職活動を経て変化があったといいます。ある企業の面接後に人事の社員から面接のフィードバックを受けたことが転機でした。「親身になってアドバイスしてくれたことで、自分の中で”冷たい”と思っていた人事のイメージがガラリと変わりました。そこからは、仕事として人事をやりたいという一心でしたね」。新卒で人事を任せてもらえる企業を片っ端から探す中で見つけた、田中事務所。何をしている会社なのかイメージも湧かない上に、営業から技術、人事まで幅広く担当する職種だったもののとにかく飛び込むことを決めました。
入社後は体当たりで人事の仕事や建築について学んできた徳田さん、「面接や説明会といった枠に囚われず、学生と深く関わるような機会を増やしたい」と、意欲は尽きません。
「自分はこうなんだ」と決めつけずに、色々な経験をしてほしい
今回の参加者は来年度に就職活動を控えた学生が半数。就職活動を終えて間もない新入社員と人事という二つの視点からアドバイスを受けていました。
徳田さんからは「自己分析をしっかりできていることが重要です。たまに働く意義をしっかり考えているのかな、と疑問に感じることもあります」。どうして働きたいのか、何をやりたいのかを明確にすることで、志望動機がはっきりと伝わってくるといいます。
「自分の先入観にとらわれずに視野を広く持つことで、徐々にやりたいことが見えてくるかもしれないです」という菅原さん。先入観にはとらわれずに、行動してみることが大きな発見につながるかもしれないと教えてくれました。
いぐするテラスの取材を終えて
何をどう学ぶかはその人次第
新しい環境に飛び込む時は、緊張もするし、わからないことだらけ。「知らないことだから苦手」と捉えるのではなく、自分で新たな活躍の場に変えていくためのヒントを得ることができました。
田中事務所が扱う「建築設備」。実は、大学で建築を専攻していた人でも建築設備を専門にする人はほんの少数。実際、ゲストのお二人も、入社後には理系の同期と同じスタートラインに立ったような状況で、一から勉強したそうです。「異分野だとかはあまり関係ないと思います。そこで何をどう学ぶかはその人次第なので」という徳田さんの言葉が印象的でした。
文章:多田明日翔(東北大学修士2年)
写真:安部静香(いぐする仙台)
いぐするテラス参加者の感想
仙台青葉学院短期大学 西坂奈畝(なほ)さん
今回は建築関係のお話を伺いました。
「建築」と聞くと難しくて仕事の内容もあまり想像がつきませんでしたが、お二人とも大学時代は文系だったと聞いて驚きました。「建物がたつまえに設計図を見ることができて嬉しい」、「日本と建物の構造が違う外国の設計図を見るのが楽しい」という建築ならではの楽しさ、やりがいもお聞きすることができ、いまいちイメージがわかなかった建築業について理解することができました。
また徳田さんが、人事になって尊敬の目を向けられることが多くなったことについても言及していました。そして、その目を向けられるだけ人間になりたいと決心し、話し方などを工夫するようになったというお話を聞き、そのお話が印象に残っています。
私も、就職しただけで満足するのではなく、その職業であることを胸を張って誇れるような人間になりたいです。
専攻とは違う分野の仕事に就いたお二人。事務系の仕事ばかり視野に入れていた私には「自分の性格を決めつけずに、違う分野の仕事にも視点を当ててみる」という言葉がより真実味を帯びて胸に響きました。
仙台青葉学院短期大学 ビジネスキャリア学科 山尾 栞里さん
建築設備がどのような仕事なのか、なぜ建築の道に進んだのかなどのお話を伺いました。
お二人とも文系学部出身で、学部と違う分野の仕事に就くという事は不安が大きかったのではないかと思いました。しかし、徳田さんは恐怖はなく「社会に出たら知らないことしかない」とおっしゃっていました。その言葉がとても心に残っています。知らないことだらけなのは当たり前なので、その場その場で学ぶことが大切なんだと思いました。
菅原さんは企業訪問をし、初めて積算という仕事を経験したそうです。知識がなかったので初めは驚きましたが、先輩とコミュニケーションをとりながら実際にやってみてやれば意外とできる!」と思い、就職を決めたそうです。
また、就活のアドバイスを頂きました。自己分析をし、自分の性格を決めつけないことは大切だということが印象に残りました。私はこういう性格だからと決めつけてしまうので、菅原さんがおっしゃっていた「やりたいことが分からなければ色んなことを経験する」「説明会などでいろんな分野のお話を聞いてみる」という言葉が胸に響きました。
いぐテラに参加し、このようなお仕事もあるんだなと初めて知りました。これからはもっと自分の視野を広げていきたいです。
仙台青葉学院短期大学 ビジネスキャリア学科 日下 萌(めぐみ)さん
建物一つ建てるのに多くの人が関わり支え合いながら作っている事、またお二人は学生時代、文学部出身で専攻と違う職業に就くのに不安はなかったのか、などたくさんのお話を聞きました。
それに対し徳田さんは「建築が分からないという引け目はなく、知らないことがあるのは当たり前で、やりながら覚えていくことが大事」と、菅原さんは「実際やってみたらできた。イメージと実際にやる事は違うかもしれないので、自分を決めつけず、様々な分野に目を向け、積極的に取り組むことが大事」と答えてくれました。
お二人の話はとても心に残りました。私自身これから就活なので、企業説明会など積極的に取り組み、自分を決めつけず、視野を広げ、多くの事に積極的に取り組もうと思いました。 また企業の方から直接話を聞く機会があまりなく、自分のイメージと実際聞くお話では、違う部分もあり、そこから得られたものも多くあったのでいぐするテラスに参加して本当に良かったです。