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ワタシゴト

カフェから地域の課題を解決していきたい。人と人をつなぐ場所づくりの仕事

花井 その子 花井 その子
1,345 views 2015.09.22

小玉仁志さん(31)ウラバタケCafe

大崎市古川で「ウラバタケCafe」を経営している小玉仁志(こだま ひとし)さん。「地元の古川で起業したい」という思いを実現し、地元の食材を使った料理を提供しながら、地域住民の交流を深める場所としても活用できるよう店づくりも工夫しています。店内に入ると、カレーのいい匂いが漂ってきました。

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町づくりに関わるための拠点

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ウラバタケCafeは、大崎市古川で2012年10月23日 にオープンしました。「飲食店を開こうと考えたときに、お客さんと気軽に交流できる場所にしたいと思って。だからカフェにしたんです」。古川は農業が盛んな地域にも関わらず、後継者不足も問題になっていました。地元の食材をPRしながら「町づくり」に関わっていきたい、地域住民の交流の場を作りたいと考えたとき、浮かんだのが当時話題になっていた農家が経営するレストラン。小玉さんは、もっと気兼ねなく、コーヒー一杯からでも入れるカフェにしようと考えました。

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名前の通り、店の裏に畑を持つカフェ、「いつも採れたての野菜をふんだんに使ったこだわりの料理を出しています」と、小玉さん。店のロゴは「ウラバタケCafe」そのものを表す建物のデザインです。名前を聞いた印象、あるいはロゴを一度見ただけで「何の店なのか」、「どんな場所なのか」がストレートに伝わる表現をすることで、より店内に入りやすい雰囲気を作り、利用者とのコミュニケーションを取りやすくすることができる、と小玉さんは考えています。「自分たちが住む地域は自分たちの手で住みよい街にしていきたいです。カフェには地域の課題を解決する糸口をつかむ力があるのではないでしょうか」。

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地元に関わりたい思いの原点

「町づくり」に興味があった小玉さんは、学生時代から毎年8月2日から4日にかけて行われるおおさき花火大会・古川祭りを始めとする地域の活動にも多く参加してきました。

大学に進学してからも、高校生まで過ごした地元で地域おこしをテーマにした県の事業に参加していました。「シャッター街」と言われていた古川の小さな商店街を活用したイベントでは入選し、予算も出してもらうことができました。イベントは地域の反響を呼び、手ごたえを感じることができたそう。

「おかげでますます古川に対しての愛着が湧きました。10代のうちに地元と深く関わった経験が今につながっているのかなと思います」。
大学卒業後は地元を離れ、出版社に就職しましたが「いずれは古川で働きたい」という強い思いがありました。「地元に腰を据えて仕事をしたいと、色々な道を模索していました」。

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ウラバタケ Cafeから新しい動きを生み出したい!

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「女性が元気に働いたり、子育てをしたり、活躍できることは、その町が元気な証拠だと思います」。ウラバタケCafeでは女性の好みに合わせたメニューをたくさん用意しています。女性が集まりやすい空間を作ることで、地元をはじめとしたさらに多くの人に来店してもらいたいと考えているからです。

ウラバタケCafe以外でも、小玉さんは地域のコミュニティをつなぐ活動をしています。2014年の終わり頃からは大崎市や町内会と協力して「出張カフェ」の開催を3回行ってきました。
「災害公営住宅が新しく大崎市の中心地にでき、他の地域から多くの人が入ってきました」小玉さんはいいます。「災害公営住宅地の集会所を中心に開いているので、地元の住民と新しく引っ越してきた人が、うまくコミュニケーションを取り、近所の人と関わりを持てるきっかけをつくることができればと考えています」。
その結果、災害公営住宅の住民同士で友人となったという報告や、「忘新年会を開こう」「古川のお祭りに参加したい」という声も上がるようになったのだといいます。

「これからもウラバタケCafeは『地元の食材がおいしく食べられる場所』であり、『地域の人が元気に活動できる源』であり続けたい」と、小玉さんは語ります。「いずれは何かが起こる『イノベーションの拠点』 になっていきたいですね」。

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考え方の違いは「楽しむもの」

学生であるうちは時間がまだたっぷりとあるので、自分の意見をしっかりと持つために、まずは自ら地域のことを調べることが大切です。地域の強みや弱みを知ることで、少なからず今後の地域でのビジネスのヒントを見出すことができると考えます。介護・福祉が当時そうであったように、地域の弱点を知り取り組むことが社会課題の解決へ繋がっていくはずです。そして積極的に「町づくり」に関わってほしい。物事を考えるとき、どうしても自分からの視点が中心になってしまいがちです。そんな時は「町づくり」の経験を多く積んだ先輩などと根気強く交流を図り、ほかの世代の人との考え方の違いを、むしろ楽しんでもらいたいです。

人と人が分け隔てなく交流できる「カフェ」の存在を生かし、町を元気にしようと工夫を重ねる小玉さんの熱意を強く感じることができました。私も地元が好きで、将来の就職先も地元が希望です。地元住民の一人として、豊かな自然や古くからある祭りなどの風習、そして何より人との繋がりを守っていかなくてはならないと思いました。学生である今のうちに、積極的に地元のことを学び、たくさんの人との意見交換を楽しみながら見聞を広げていきたいです。
花井 その子花井 その子宮城学院女子大学(執筆当時)
文章:花井その子 (宮城学院女子大学1年)
写真:多田花野 (東北学院大学1年)
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