学生記者がお仕事の魅力を発見!仙台イケてる会社訪問
イケ社

人気は全国区!厳選の酒と酒蔵の気持ちを届ける「阿部酒店」

‎立田 祥久 立田祥久
15,706 views 2014.05.05
‎立田 祥久 ‎立田 祥久 東北大学3年(執筆当時)
私が愛読する、食がテーマの雑誌「dancyu」(おやじくさいなんて、言わないでくださいね!)。3月号は最近たしなむようになった“日本酒”の特集でした。ふと目にとまったのが、全国情熱の酒販店リスト。宮城県からは3店舗がノミネートしています。その中に「阿部酒店」の名前が。

「ん?阿部酒店って…ウチから徒歩30秒の酒屋じゃないか!」

灯台下暗し。なんと、日本酒で全国に名を馳せる名店だったとは!
一体、阿部酒店の人気たる秘訣は何なのか。さっそく、取材にでかけてきました。

創業110年の老舗

青葉区川内亀岡町の閑静な住宅街にたたずむ阿部酒店は、110年ほど続く老舗の酒屋です。現在はご主人の阿部隆之さん(57)を中心に、奥様のむね子さんとお母様の由貴子さんの3人で看板を守っています。
abesake1
国分町の千松島酒造(現千松島パーキング)に携わっていた4代前のご主人が、亀岡の地で日本酒を販売したことが始まりと伝えられています。

abesake2

取材時の店内は軽快な今風のJポップが流れ、桜の飾りで華やかな内装でした。一方で、日本酒が入った冷蔵庫の上には100年以上前から伝わる書が鎮座。「商売ではおごらず富を蓄えよ」という意味だそうで、創業当時の教えが今も掲げられています。

平日は朝8時半開店で夜9時半閉店。日中は注文に合わせて配達に回ります。学生の新歓コンパから大学の研究室の飲み会、各種イベントまで様々。そういえば、大学のキャンパスで阿部さんを見かけたような気が…お酒の配達にいらしていたんですね。先月は花見会場を行ったり来たり、大忙しだったそうです。

ホームページではほぼ毎日、ブログを執筆しています。日々の気づきや入荷情報を発信しています。

仙台の企業魅力3つ

県内屈指!日本酒のラインナップ

とにかく、日本酒の品ぞろえが豊富!宮城県内を中心に、40ほどの酒蔵から約200種類を並べています。商品に合わせて冷蔵庫の温度を0℃~5℃に保ち、品質管理にも気を配っています。
abesake3
abesake4
レジ左隣には、福岡の工場でオーダーメードしてもらったという高さ2メートルほどの冷蔵庫が。なんと、この冷蔵庫の中にある一升瓶のほとんどは、スーパー等で市販されていない限定酒なのだそうです。老舗の貫録が感じられます。
手前の3本は、各蔵元が阿部酒店だけに特別醸造している日本酒です。中央の「亀岡」は、萩野酒造のもの。20年ほど前、阿部さんご自身が萩野酒造に足を運び、当時の萩野酒造では醸造していなかった「中取り純米吟醸」と呼ばれる高品質酒の醸造を依頼。商品化が実現し、阿部酒店の人気商品となりました。「萩の鶴の『鶴』と亀岡の『亀』で縁起がいいでしょ」と、阿部さんはご満悦です。

酒蔵の「気持ち」を届ける

同店の「売り」はなんといっても、多数の蔵元と交流があることです。店内に各蔵の限定商品がずらりと並んでいることからも、その親密な関係が伺えます。毎年数回、蔵元へ直接出向いて、お酒のできを確かめています。ときには新商品の提案もします。

取材中、秋田清酒株式会社の方が営業にいらっしゃいました。

abesake5

阿部さんの人柄を尋ねると「蔵元の人間よりも日本酒に詳しく、安心して販売をお任せできる方」とのこと。周囲から厚い信頼を集めています。

東日本大震災ではビン商品のほとんどが破損。築50年以上の店舗も深刻な損害を受け、営業再開には建て直しが必要となりました。一度は閉店も考えたそうです。そんな時、阿部さんを励ましたのが蔵元の存在だったといいます。
「酒蔵が崩壊したり津波に襲われたりと壊滅的だったのに、彼らは『酒を造り続けたい』と前を向いていました。それなら、売り手がいないと始まらない」。
営業を続けながら店の新築にふみきり、2011年6月、改築した店舗で営業を始めました。
「私は日本酒を造った人の『気持ち』を売っているつもりです。蔵元が丹精込めて造った酒をお客様に届ける。それが私の役目です」

「お酒を楽しむ会」を開催

「美味しい日本酒を大勢で共有したい」。
阿部さんの強い思いが形になったのが「お酒を楽しむ会」です。阿部酒店の常連客や蔵元の方々を集めて、純米酒や吟醸酒など質の高いお酒を料理とともに楽しむイベントです。阿部酒店の主催で、毎年2~3回行われています。平成5年に始まった本イベントは昨年、記念すべき50回目を迎えました。
来月29日にホテル法華クラブ仙台において開かれる会には、県内外から180人の参加が予定されています。県内を中心とする13の酒蔵が一堂に会する夢の共演。参加費5000円で、50種類以上の日本酒の飲み比べができます!会場でしか味わえない限定酒も登場。日本酒好きにはたまらない一日になります。
 とっても“おいしい”話ですが、「『あれもこれも良い日本酒だった』で終わりの会にはしたくない」と阿部さん。店の常連客と蔵の皆さんとで楽しい時間を過ごし、顔を合わせて日本酒の魅力を伝える会にしたいといいます。一般の参加を限定しているのには、そんな理由があるのです。

日本酒を「みて」、比べてほしい!

今後の課題は、日本酒の味が比べられるお客さんを増やすことです。そのために、お客さんには日本酒を「みて」もらうことを推奨しています。「飲む」ではなくて「みる」。五感で堪能するという意味です。目で色を見る、鼻で匂いをかぐ、肌で温度を感じる、舌で味わうといった具合です。
abesake6

最近は日本酒の種類が増えて、銘柄や価格ばかりに気を取られ、肝心な味に言及しない人が多いと言います。
「それではもったいないですね」と阿部さん。
「同じ銘柄でも様々な種類があって、精米歩合、火入れ具合、使用した酵母、仕込んだ時期などで、違いが生じます。ラベルを見比べながら自分に合った一本を見つければ、お酒の世界がもっと広がるはず。自分はそのお手伝いをしていきたいです」
 
取材中にも何人もお客さんが来店しました。
「花見のために辛口の日本酒を2升買いに来たんだけど…」
「5000円で買えるおすすめの日本酒は?」
一人ひとりに合った日本酒を提案していく阿部さん。
コミュニケーションを取り合いながら、お客さんとの距離を縮めていきます。
冷蔵ケースの中の日本酒を眺める阿部さんの表情は、我が子を見守る父親のようでした。

abesake7

さっそく亀岡を「みて」みる!

abesake_tatuta1では、自分も日本酒を「みて」みようと思います。購入したのは先ほども紹介した「亀岡」。2本購入したのにはわけがございまして…ラベル上の数字をご覧ください。

abesake8

34番と35番。

タンク番号の違いです。原材料と製法は全く同じ、仕込んだ時期もほとんど変わりません。果たして自分には違いが分かるのか…。桜をバックに、花見の席でいただきました。

abesake_tatuta2まずは34番。
「うん、美味しい!旨味と爽やかさが絶妙なバランス!」
続いて35番。
「うん、これも美味しい!旨味と爽やかさが絶妙なバランス!あれ、違いはというと…」

……翌日、阿部酒店にて

abesake9
阿部さん、降参です(泣)違いを教えてください!
「35番の方が、少しだけ味が濃くなかったかい?両者の違いはタンクが窓側にあったか否かなんだけど、それだけで味に変化が出る。奥が深いでしょ」
「う~ん、なるほど。阿部さんには違いがはっきりと分かるのでしょうか」
「あたりまえじゃないか」

好きこそものの上手なれ。心から日本酒を愛している阿部さんだからこそ、言葉の一つひとつに強いメッセージ性を感じました。
情報を発信する、商品を売る、人と人とをつなげる。いずれにしても私たちが働くという場合、何か他人に伝えたい「思い」があるはずです。そんな時、自分がかかわる情報や人、物を、心から好きになることから仕事は始まるんだ!大切なことを再認識させていただきました。
阿部先生に師事して日本酒の魅力を語れる男になろうと、21歳は決意を新たにしました。これからもお世話になりま~す!

‎立田 祥久‎立田 祥久東北大学3年(執筆当時)
文章:名前(○大学○年)
写真:名前(○大学○年)
next_action

仙台亀岡の地酒屋 阿部酒店
http://www.abesake.com/
住所仙台市青葉区川内亀岡町12番地
TEL&FAX022-223-9037
営業時間08:30〜21:30(平日)
09:00〜19:00(日・祝)
定休日年中無休(元旦・冠婚葬祭を除く)