記者(個人)

血の跡が語るメッセージ

久道潤也 久道潤也
431 views 2014.03.04

仙台市青葉区の「特殊清掃会社仙台ホーキング」は、自殺や孤独死の現場の清掃や、遺品整理を行う。従業員数50人のビルメンテナンス会社の一部門として、2011年2月に設立した。遺体の痕跡をきれいにし、部屋を再び利用できるように回復させる仕事だ。

「玄関を開けると、一面血の海だった」。作業員の菊池哲也さん(43)は、自殺現場を目の当たりにした。彼の特殊清掃としての初仕事は、想像を絶するものだった。

床にはウジ虫がもぞもぞうごめき、ハエが飛び交う。「覚悟はしていたが、これほどまでとは」。マスクをしていても入ってくる臭いに耐え、仕事に取り掛かる。部屋に遺体はないが、血や体液が布団に染み込み、人の形がぼんやりと浮かび上がる。

死に寄り添う現場からみえたものがある。菊池さんは自殺現場のほかに、孤独死の現場も目にしてきた。洗濯機に血の跡があり、よく見ると、這い上がろうとした手の跡だった。

血の跡を拭きながら心が重くなったという。「生きたい」と願うメッセージがそこにはあった。

▲清掃用具を車に積み込む菊池さん=特殊清掃仙台ホーキング(仙台市青葉区)

菊池さんは仕事の前に手を合わせてから作業に入る。亡くなった人への礼儀と、供養の思いを込めるためだ。部屋を片付け、きれいな状態で故人を送り出す。

丁寧な仕事で遺族の人に感謝された。「ありがとうございます」の言葉に、力になれてよかったと思った。社会の片隅にでも、こうした仕事を必要としている人がいることを、感謝の言葉で実感する。

「特殊清掃の社会の位置づけは、すきま産業。ビジネスの側面もあるが、誰かが責任を持ってやらなければいけない仕事」と社長の及川信一さん(66)は話す。

社会のひずみから生まれた問題を目の当たりにする現場から、人間関係の希薄さが見えてきた。「孤独死は昔から歴史の中に存在していた。今が特別なのでなく、そばに存在している。人との関わりを大切にしてほしい」。助けを求める声が、今日もどこかで発せられているかもしれない。

next_action

この記事を書いた人

久道潤也
久道潤也
東北学院大学3年
東北学院大学2年