記者(個人)

多忙の中にほっと一息

及川寛江 及川寛江
102 views 2014.02.24

 お茶の井ケ田(仙台市青葉区)の店内では現代の忙しい社会で見ることのない光景を目にする。一つのテーブルを囲み、急須で入れたお茶を飲んでほっと一息つく「3時のおやつ」のようなゆったりした時間だ。

 そのような光景を取り戻すため、井ケ田製茶は「おやつの3時プロジェクト」を実施した。東日本大震災から約2年経った今年の3月18日午後3時、宮城県内各地の100社・団体で、一斉にお茶を飲むというものだ。

 かつての午後3時は一つの机を囲み、急須でお茶を入れてお菓子を食べる時間で、人と人をつなぐ役割をしていた。その時間を取り戻したい常務取締役の今野順子さんは「お茶を通してみんなで団欒して欲しい」と語る。

 現在、ペットボトルのお茶が自動販売機やコンビニなど至る所で簡単に手に入る。そのため「お茶=買ってくるもの」と考えている若者が多く、子供のころから急須で入れたお茶になじみが無い。また毎日仕事で多忙に追われている人々が多いため、自然と「3時のおやつの時間」は消えていってしまった。

 井ケ田製茶はそのような人々にほっと一息ついて「休んでほしい」という願いと急須で入れるお茶の良さを「伝えたい」という思いがある。そのための試みが「日本の三時プロジェクト」だ。

▲日本の3時プロジェクトについて語る今野順子さん=8月23日仙台市青葉区

 3月に参加した企業・団体からは「美味しかった」「お茶を飲むことを実感した」など多くの声が寄せられた。多忙に追われる多くの人々に安らぎと癒しの時間を与えた。

 「日本の3時プロジェクト」は今年の秋に第2弾も行われる。春は企業・団体を中心に募集をかけお茶と茶菓子を贈った。秋は春と同様企業・団体はもちろん「復旧・復興のために働いている人々、被災者コミュニティの中にいる人など被災地へも募集をかけたい」という。さらに育児に疲れているお母さんにも休んでほしいという思いもある。

 秋の「日本の3時プロジェクト」は宮城県内の広い地域でお茶をすする音が聞こえ、ゆったりとした時間が流れそうだ。そこで「3時のおやつ」の大切さを実感してもらい、その時間が日常に戻るために井ケ田製茶の挑戦が続く。

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及川寛江
及川寛江
東北学院大学文学部英文学科3年