テラス

倉庫×インターネット「仙台冷蔵倉庫」金森康治さん

千葉 真理子 千葉 真理子
1,053 views 2015.11.10
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半導体のサービスエンジニアから物流業界に転身!

10月27日のいぐするテラスは、仙台市太白区にある仙台冷蔵倉庫株式会社から取締役管理部長、金森康治さんをお迎えしました。
参加者は「社会人の生の声を聞いて将来について考えたい」、「物流というよく知らない業界を学びたい」という人たちです。

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半導体のサービスエンジニアから飲食店に転職した後、父が経営している仙台冷蔵倉庫を入社した金森さん。最初の頃は物流の仕事にあまり誇りが持てなかったものの、震災を経て変わったと言います。新たな試みとして、倉庫業務とインターネットをつないだ事業も始めたのだとか。「倉庫とネット?全然つながりが見えない!」ざわつく参加者たち。新しいビジネスにかける金森さんの思いを聞きました!

冷たい食品はお任せ!の、あたたかい会社

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▲仙台冷蔵倉庫ホームページより(www.sendai-reizo-souko.co.jp)

仙台冷蔵倉庫は、主に冷凍・冷蔵・常温の3温度の商品の管理と物流を行う会社です。製造業者から引き受けた食品を決められた温度の下で保管すること、配送先別に商品を仕分け、運送業者に引き渡すことが業務の6~7割を占めます。仙台で流通している冷凍・冷蔵・チルド食品の多くを取り扱っているとか。仙台冷蔵倉庫経由の商品は私たちの冷蔵庫や冷凍庫にも入っているかも?!
倉庫や物流という業界は、関係者以外は立ち入れないような狭くて閉ざされているというイメージを持たれがちだと感じていると金森さんはいいます。「でも、うちの会社は来訪客ウェルカムでむしろ多くの人に見に来てもらいたい。オープンな雰囲気で親しみを持ってもらえるような会社にしたいと考えています」。社内では社員とその家族を含めて定期的にバーベキューパーティーなどを開催して親睦を深めているのだとか。

震災から再起、やっと見つけた仕事のやりがい

2011年3月11日の東日本大震災で当時仙台港に2つのセンターを構えていた仙台冷蔵倉庫も被害を受けました。電気が使えず中心業務である「冷やす」ことができないため、全く仕事になりません。さらにインターネットもつながらず情報収集ができない状況が続きます。「今後の経営をどうしていくか、自分の会社のことで精一杯でした」。
後ろ向きになっていたときに取引先から「東北で被災した多くの人々が商品を待っているというのに、お前たちがやらないで誰が物流をやるんだ!」と叱咤激励の言葉をかけられました。震災が起きるまでは質よりも値段が問われる物流の仕事に自信が持てなかったという金森さん。自分たちが届けるものがお客さんを喜ばせることができるということを震災によって実感し、やりがいを感じられるようになったと言います。
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仙台冷蔵倉庫は北海道から非常用の発電機をつないで存続の危機を乗り越えました。震災から2年後には新たに第3センターも竣工し、被災前と同規模以上に機能をするまでに再興します。「会社が落ち着き始めて、販路の再確保に苦しむ周りの企業の状況が把握できるようになった」と話す金森さん。企業が再起するには、会社の機能を元通りにするだけでなく、販路を再び確保しなければならないという課題がありました。小売店は、従来仕入れていた商品が入手できないからといって、空の棚をそのまま放置しておくわけにはいきません。メーカーが震災から立ち直り、従来の製品を製造しても、他の商品で補充してしまったところにまた品物を置ける保証はないのです。
「仙台冷蔵倉庫は、地元に密着した企業。地元が「元気」をなくしてしまったのでは存続していくことは不可能だ」。祖父の代からの考えのもと、どうしたら周りの企業とともに宮城県を・東北を盛り上げていけるのか…考え抜いて新しいビジネスにたどり着きます。

東北を元気に!倉庫×インターネット=「東北通販企画」

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金森さんは東北の名産品を集めて販売するインターネットサイト「東北通販企画」を考え出しました。あらゆる食品会社の商品を扱い物流までを引き受けているという仙台冷蔵倉庫が持つ強みと、様々なメーカーの商品を詰め合わせるという物流加工のノウハウの2つの特性を生かしました。セールスポイントは一度に複数の商品をまとめ買いできるため送料が割安になること、いろいろな商品を少しずつ取り寄せて食べ比べを楽しめることです。

「東北の外に住んでいる人にも東北の名産品を手に取ってもらえるような、インターネット上の物産展を作りたい」。一箇所でたくさんの商品を見られることで、今まで買ったことのない商品にも興味を持ってもらいたいという思いでした。
より多くの人に知ってもらうべく、新ビジネスの媒体をインターネットサイトにすることにした金森さん。サイトを一から立ち上げたのでは、知名度も低く、買ってもらうというゴールにたどり着くまで時間がかかりすぎてしまうという課題に突き当たりました。そこで仙台のタウン情報を扱うインターネットサイトと連携できないかと考えます。交渉を重ね、地域を盛り上げていきたいという思いが一致して提携の合意を得ることができました。
「私たちが目指すのは東北が活気づくこと。『東北通販企画』がそのきっかけになれば嬉しいです」。
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金森さんはまだ思い描いていたものを実現できていないと言います。「もともとは、ネット上の物産展を作って取引先の企業の販路を広げるお手伝いがしたかったのですが、今は目当てのものを1品買う直送の形になっています」。でも、と続けます。「取引先の再起に貢献したいという理想像だけではうまくいかないことはたくさんありますが、途中で諦めるわけにもいきません。何のためにやっているのかと自分に問いかけ続けながらやっています」。
今はまだ宮城県限定の「東北通販企画」。今後はもっと範囲を広げて、東北を盛り上げていきたいという目標があります。「東北は私の生まれ育った場所なので、良さをより多くの人に知ってもらいたい。活気あふれる地域づくりに貢献していきたいです」。

未来の社会人へのエール

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職場でほしいのは、上司のいうことに同意するイエスマンや残業せずに仕事を終わらせられる人ばかりではないと金森さんは言います。「会社の社長だからといって100点満点なわけではありません。会社が目指す先と同じ方向を向いて頑張ってくれる人や110%の自己実現を目指している人を信頼し、支え合って会社を作っていけるのではないかと思います」。
参加者からの「学生のうちにしておいた方がいいことって何でしょうか?」という質問には、「学生時代は、人とのつながり『縁』を大切にしてほしいです。今の若者は人間関係が壊れてしまうことを恐れすぎているようにも感じます」と金森さんは採用する側、社会人の先輩として教えてくれました。「社会で働くときには言わなければならないことはたくさんあります。傷つけあわずに楽しいだけなのも良いのかもしれませんが、言うべきことを言い合うからこそ強い信頼関係を築くことができるのです」。
それに、と続けます「成功とは、失敗してもやり続けること。進んで間違えようとかしくじることを奨励しているわけではなく、失敗を恐れて諦めてほしくないな、ということです。出来ない理由を考えて逃げてしまうことは簡単ですが、それよりも何ができるかを考えてほしいですね」。
参加者は、「物流業界についてだけでなく、社会で働くことについて現実的な話を聞けてためになった」、「普段は社会人のお話を聞く機会がないので、大学生活だけでは得られない見識を得られた」と話します。終始熱心に話を聞き、メモを取る手が止まらない様子でした。

きれいごとから始まる!

金森さんは何度か「きれいごとだけじゃうまくいかないこともある」と言いつつ、「成功は、失敗してもやり続けること。わざと間違えてもいいということではなく、しくじることを恐れないでほしい」という言葉で締めました。
「理想だけではうまくいかない」というのは、思い描く形がきれいなものであるほど、裏での地道な努力とのギャップに苦しくなって続けられなくなるという考えがあるのだと思います。
私には、新しいことを始めてみようと思い立っても踏み出す勇気を持てずに終わってしまった過去が何度もあります。お話を聞いて、私はまだちゃんと失敗した経験すらできていないことに気づきました。金森さんは、理想を掲げること・その実現のために試行錯誤を繰り返すことの大切さを示してくれ、一歩を踏み出せるように背中を押してくれました。私が将来どの道に進みたいのか、どんな経験が近道になるのか、考え直すきっかけをもらったいぐするテラスでした。

画像提供:仙台冷蔵倉庫株式会社
文章:千葉真理子(山形大学3年)
写真:千葉真理子(山形大学3年)、いぐする仙台 安部静香

いぐするテラス参加者の感想

仙台青葉学院短期大学  大内七海さん

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東日本大震災を経験し、地元や東北全体の産業の活性化を目的に考案した東北通販企画は、震災を乗り越えていく上でこれまで以上に東北のことを知って欲しいという考えから生まれたものだとお聞きしました。震災後は、所有する倉庫を津波指定ビルにしたり、地元の会社を活気付かせるためには何が出来るのかなどを真剣に考えられるのは、自分の会社だけで経営が成り立ってきた訳ではないと思っているからこそだと感じました。そして、アイスはコンビニに行けば当たり前のように売られていますが、店に並んで私たちに届くまでには仙台冷蔵倉庫さんのような方達がいるお陰だというをことを今回のお話を聞き、深く実感することができました。
また、就職して働いていく上で大切なことを社会人の先輩としてお聞きすることもできました。特に「言わなければいけないことは言う」という言葉が心に残りました。普段、なにか相手に対して思うことがあっても、傷つけてしまうのではないかと恐れて伝えることが出来ない私の胸に刺さりました。相手を思い、双方 向にプラスになるような伝え方が出来るように積極的にコミュニケーションを取ろうと思います。

仙台青葉学院短期大学 山尾栞里さん

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金森さんは、冷凍・チルド・常温の3つの温度で保管できることなど会社の魅力を楽しそうに話してくださいました。真面目で仕事に誇りを持っている方だという印象を受けました。
金森さん自身が震災で電気や情報がない経験をして、「自分たちが動かないと物が動かない」、「物が動かないと地元が衰退してしまう」と感じたそうです。それから「力を1つに集めて東北の魅力を伝えたい」という思いで、積極的に色々な店に声をかけ、商品販売のウェブサイトを作ったというエピソードを聞きました。 地元を活気づけたいという思いの強さが伝わってきました。
金森さんの「できない理由を考えずにできる事を考えよう」という言葉が胸に残っています。私は失敗する事が嫌で、新しい事に挑戦する時にすぐできないと決めつけていました。これからは先にできる事を意識して考え、前向きな気持ちで物事に挑戦したいです。

仙台青葉学院短期大学 S.Eさん

震災の影響で冷蔵倉庫が被害に遭い、金森さんは会社を続けるのは難しいと思ったそうです。しかし、アイスを楽しみにしている子どもがいる、食品会社が生産 出来ても十分に保管ができる冷蔵庫がない、といった状況を解決すべく、いち早く復旧したという事実に驚きました。そして今回、食品会社の多くが物流会社に 保管の依頼をすることを初めて知りました。もしも物流に携わる会社が被害に遭ったまま再開していなかったら、私達は食事を満足にできていたか、ということを考える機会となりました。
今回のお話を聞いて、知らないところで誰かに支えられて生きているという事実に気付くことができたので、これからもっと色々な事に興味を持ち、見聞を広げていきたいです。

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この記事を書いた人

千葉 真理子
千葉 真理子
山形大学(執筆当時)