テラス

出張!いぐするテラス in 仙台青葉学院短期大学

高安・小山 高安・小山
509 views 2015.10.23

「出張!いぐするテラス」in仙台青葉学院短期大学

10月2日、「出張!いぐするテラスin仙台青葉短期大学」を開催しました。
ゲストは株式会社 建築工房零(ぜろ)から小野亜弥さん、増子友美さん社会福祉法人 青葉福祉会から五百澤(いおざわ)洋太さん、五十嵐美幸さん。2年生授業の一環として「働くってどういうこと?」をテーマに、これから社会に出て行く学生に働く現場を伝えます。


株式会社 建築工房 零(ぜろ)小野亜弥さん、増子友美さん

家づくりを通して社会問題に取り組む

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▲写真提供:建築工房零

小野亜弥さんと増子友美さんが働いている建築工房零は、地域密着型の工務店です。社是は「地球と暮らそう」。「建物だけでなく、心も体も健やかな暮らし」を目指す「健やかな暮らし創造業」です。家を建築するときには、建て主さんととことん向き合い、1人の担当者が中心となり家づくりを進めていきます。30年後、50年後、100年後に「いい家だね」と言ってもらえるような家づくり。木材は日本の森を活性化させ、世界の森を守るために地元の木を、100年経っても住み続けられるような丈夫な骨組み、手入れをするなど変更を加えられるように考えているそう。他にも薪ストーブ、ペレットストーブの販売、住宅や店舗のリフォームも推進し、住まいづくりを通して様々な社会問題にも取り組んでいます。

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就職の決め手は合同説明会での出会い

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▲写真左:小野亜弥さん 写真右:増子友美さん

 「就職活動の時に零の考えに感銘を受け、入社したいと思いました!」と微笑みながら話すのは入社3年目の増子さん。現在の直属の上司である菊地さんとの初めての出会いは仙台市内で行われた合同説明会でした。仕事を通して社会問題に取り組んでいきたいと考えていた増子さん、菊地さんの熱い語り口に「こみあげてくるものがあった」と振り返ります。
大学時代は心理学を専攻していましたが、会社では経理を担当することになりました。入社当時は分からないことだらけ。夜、家に帰って泣いていたこともあったといいます。自分で勉強したり、先輩に教えられたりしながら、経理の仕事に必要な知識を身に付けていきました。3年目の今では月に5000万円ほどの請求書も自信を持って対応できるようになりました。零に導いてくれた菊地さんに近づけるよう「将来は人事で採用の担当にも挑戦してみたい」と意欲をみなぎらせています。

働きやすい環境づくり。人間関係を大切に!

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「働く環境、特に人間関係には注意を払って、勤務体系と採用を工夫しています」と話すのは先輩社員の小野さん。「気遣いの出来る人間関係が働きやすい環境を作る」と考えているからです。社員の希望通りの時間で勤めることができるので、出産後の女性など社会復帰が難しい人でも仕事がしやすくなっています。
「わが社では採用にお見合い方式を利用しています」と小野さんは続けます。採用前に現場でのアルバイト期間を通じて学生と会社側がお互いの相性を見るお見合い期間を導入しています。零に就職したいと考える学生は1~2ヶ月の間、各々の希望の現場にアルバイトで入ります。建築に関わりたいのなら、家の模型作りや、家の購入者との商談にも出席するチャンスもあるのです。増子さんも「お見合い」ののちにあらためて面接を受け、内定をもらったと話します。

参加者の声

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小野さん、増子さんの話に耳を傾ける仙台青葉学院短期大学の学生たち。来年の春には卒業を迎えます。就職活動をしている人も多く、2人の話に何度も頷きながら耳を傾けていました。講演終了後の質問タイム、学生たちは思い思いに感想や質問を投げかけます。「増子さんと同じように企業のアツい思いに感銘した体験は私もあった!」と共感を抱く人もいれば、「家づくりを通して社会を変えたいという思いが伝わってきた」と目を輝かせて話す人もいました。それぞれが社会に出て自分が働いている姿を思い浮かべられるようなきっかけになったようです。

取材を終えて

仕事って誰のためにするの?

小野さん、増子さんの働く現場でのお話を聞き、得た教訓は「自分の仕事が、社会を変えていく一端を担っていることがやりがいにつながる」ということです。
エネルギーや環境など、便利さの影に隠れる社会問題に、家づくりを通じて取り組む会社に就職した増子さん。その会社で働くことで社会問題にも取り組んでいると感じるからこそ、大変なことでも頑張って乗り越えていけるのだと思いました。増子さんが就活時代に見つけた菊地さんのような尊敬できる先輩の存在や、気遣いのできる人間関係が特に大事という話は、社会に出ても学生と変わらないところもあるのだなと親近感を覚えました。お話を聞いて、僕自身まだ見ぬ社会人の世界に少し近づいたような気がします。

文:東北大学3年 高安 優太郎
写真提供:建築工房零
写真:高安 優太郎、いぐする仙台 安部静香


社会福祉法人 青葉福祉会 五百澤洋太さん 五十嵐美幸さん

「生涯」を通じて手を差し伸べる

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社会福祉法人青葉福祉会は、「生涯福祉」の理念に基づいて、保育所や学生寮から高齢者向けの施設の運営まで、幅広い世代の人々の生活を支援しています。五百澤(いおざわ)洋太さんは法人本部総務部長、五十嵐美幸さんは青葉福祉会八幡デイサービスセンターで働いています。きゃりぽーと仙台の村上善昭さんの進行のもと、介護福祉士として働く五十嵐さんのお話を中心に、介護の仕事について、話していただきました。

誰かの生活に寄り添うための原動力

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学生時代保育の道を志していた五十嵐さんは、親族の介護やボランティアなどをきっかけに介護の世界に飛び込みました。介護の現場は思っていたよりもやるべきことが多く、高齢者一人ひとりに合わせた対応ができるように、先輩のアドバイスを受けながら、努力を積み重ねたといいます。現在五十嵐さんは、デイサービスセンターで働いています。施設の利用者の多くが高齢者の方で、身体機能やものごとを認知する能力も人によって差があります。なので、施設で行事を行うときには、どんな役でも全員が参加できるように、利用者と職員同士で話し合い、工夫をこらしているそうです。ボウリング大会を行った時には、通常使われる重いボウリング専用のボールではなく、紙のボールを用いて、力がなくても投げられるようにしたり、軽い力でも倒れるように空のペットボトルを逆さまに並べてピンの代わりにしたり、全員が楽しむための配慮をしています。「『介護』という、人の生活に直接関わる職業を通じて、笑顔になってもらえることが原動力になっていますね」。

五百澤さんも、総務部長の業務だけでなく、ホームレスの自立支援事業の現場に実際に携わっています。「感謝を受けることが仕事へのやりがいに繋がります」と話してくれました。

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介護ってどんな仕事?

「介護職が大変な力仕事だといったマイナスの印象を持つ人も多いと感じています。しかし、どんな仕事でも苦労することがあるのは同じ」と五百澤さんはいいます。「青葉福祉会では、各利用者ごとに、入浴や食事といったスケジュールを組み立てつつ、スケジュール通りに行動することを決して無理強いすることはありません。自由に過ごしてほしいという考えに基づいた支援を行っています」。さらに、社会福祉法人は税制が優遇されると同時に厳しい行政の監査のもと運営されています。「行政の目が行き届いた環境のなかで、高齢者をはじめとして、目の前にいる様々な助けを必要としている人々の幸せを第一に追求することが、自分の幸せにも通じる仕事です。」と笑顔で語ってくれました。

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参加者の声

配られたパンフレットを熱心に読み、五十嵐さんと五百澤さんの話を真剣に聞いていた学生たち。
「介護職は人と接し思いやりを育ててくれる仕事なのだと思った」。「福祉は大変な仕事だと思っていたけど、介護に限らずどんな仕事でも大変な部分はあるんだとわかった」。講演後に書いたアンケートでは、介護や仕事に対するイメージが変わったという人が何人もいました。「挨拶や礼儀など、基本中の基本を当たり前にできることが大事!」と、働く上で大切なことを改めて認識した人も。「正しい礼儀を身につけて活躍していきたい!」と社会にでることが楽しみになったようでした。

取材を終えて

介護は、他人の生活の中に入って日常を支える仕事です。支援する側もされる側も、お互いの表情や気持ちが見えやすい距離で関わりを持つ職業だからこそ、感謝や笑顔を汲み取りやすいのだと実感しました。五百澤さんは、自分の仕事が、「目の前にいる様々な助けを必要としている人々の幸せを第一に追求すること」だけではなく、「人の生涯にふれてお手伝いすること」だと話していました。人と人の密接な交流によって成り立つ福祉の仕事を表していてとても印象的でした。「福祉の仕事」と聞くと、私は介護や保育といった職業だけという先入観にとらわれていました。でも、どんな世代の人を支えることであっても、自分の支援によって幸せになってほしいという気持ちで行動することが福祉活動であり、その気持ちを持って、高齢者を支えることが介護なのだと思います。

文:東北大学4年 小山沙織
写真:小山沙織、いぐする仙台 安部静香

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