テラス

【いぐするテラス】有限会社 竹鶏ファーム 志村竜生さん

佐藤 萌 佐藤 萌
321 views 2015.08.14
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養鶏業とこせがれネットワークを通じて、地元産業の活性化を目指す

社会に出て働く大人からリアルな仕事の話を聞く座談会「いぐするテラス」。
7月28日は、「有限会社竹鶏ファーム」で養鶏業を営む傍ら、「一般社団法人宮城のこせがれネットワーク」で代表を務めている志村竜生さんをゲストに招き、お話を伺いました。イベントの参加者は8名。少し緊張した空気の中、始まりました。

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養鶏所を継ぐことを決意

大学では畜産学科に所属していたという志村さん。第一次産業に直結する学科に進学したものの、「家業を継ぐことは全く意識していなかった」。卒業後は東京でフードサービス業の会社に就職し、コーヒーの営業をしていました。

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「地元に帰って養鶏所の後を継ごう」と思ったのは、二つのきっかけがあったからでした。
一つは『竜馬が行く』(司馬遼太郎 著)の、「世に生を得るは、事を為すにあり」という一節に感化されたことです。現代語では「人間がこの世に生まれてくるのは、何かを成し遂げるためである」。志村さんはこの一節を読み、自分の強みについて思いを馳せ、「自分は養鶏所の跡継ぎだ」という意識が濃厚になりました。
もう一つは、養鶏所での仕事を前向きに考える出来事があったからです。「自分がよく知らない商品を、人に勧めていいのだろうか」。会社に勤めて営業をしている時は、自分が扱っているコーヒーの知識もあまりなく、分からないことばかりでした。ある日、取引先で仲良くなった人と卵の話をする機会がありました。小さいころから慣れ親しんでいて、知識も豊富な卵の話をするのは楽しく、また商品について詳しく知っているので自信を持ってお勧めできたそう。取引先とは竹鶏ファームの商品の販売契約を結ぶことになりました。自分が養鶏所で働いているところをイメージできた瞬間でした。
志村さんは2年間のサラリーマン生活を経た後、宮城県白石市に戻り、実家の養鶏所で働き始めました。

「商品に込めた想い」を正しく伝える

志村さんが家業を継いでから変わったことは、従業員が増えたことです。以前は一人当たりの仕事量が多く、業務をこなすのに精いっぱいで、消費者と交流する機会はあまりありませんでした。従業員が増え、お客さんに配達することで、消費者の声を直接聞けるようになりました。
志村さんは「お給料は経営者からではなく、お客さんからいただいている」といい、「お客さんの声が一番の励みになる」と話します。お客さんへ感謝の気持ちを還元するためにも、竹鶏ファームが「どのような思いで商品を作っているのか」を正しく伝えることが何より重要と考えています。竹鶏ファームの社員も、お客さんの信頼に応え、より良い商品を届けるため、仕事に一層熱が入ります。竹鶏ファームが情報を発信するために毎月発行しているのが、「竹鶏かわら版」です。竹鶏ファームの近況報告、新商品のお披露目、従業員のコラムがすべて手書きで書かれています

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(竹鶏ファーム ホームページより)

地域を活性化したい!「宮城のこせがれネットワーク」

志村さんは地域全体の産業を活性化させる活動も行っています。サラリーマン時代に参加していた「農家のこせがれネットワーク」をモデルにした「宮城のこせがれネットワーク」を立ち上げ、代表を務めています。「こせがれネットワーク」は、「食」を中心とした地域の産業を支える若き担い手=「こせがれ」たちを応援し、こせがれ同士のネットワークを構築する団体。メンバーは農業、漁業、畜産業などの第一次産業従事者、飲食業界の関係者、今後農業を始めようと思っている若者など、業種も年代も異なった人たちです。月に一回「こせがれ定例会」が開催され、この定例会に参加すると、こせがれネットワークの一員となれます。「立場が違う人と交流することで、自分とは異なった角度や切り口で物事を考えることができるようになり、視野が広がる」と志村さんは言います。

代表的な事業は、レストランを借りて開催する「こせがれキッチン」です。毎回担当するこせがれは変わりますが、自らメニューを考え、料理を作り、お客さんをおもてなしします。こせがれたちの食に対する思いを、消費者に直接伝えることができる貴重な場です。
 
「これから宮城のこせがれネットワークが目指していく姿は?」という参加者からの問いには、「宮城の食料自給率の向上など、数値で見える成果をあげること、他の農業団体との共同事業を始めることなどを考えている」と志村さんは答えてくれました。

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(竹鶏ファーム ホームページより)

参加者の声

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参加者は東北大学や仙台青葉学院短期大学の学生8人でした。学部は農学部が3人と最も多く、食に直接関係する仕事への関心の高さがうかがえました。参加理由は「インターン活動の一環として」「食と現代社会との関係を知りたいと思った」などさまざま。
「今までは生産者は消費者のことを考えている暇はないと思っていた。しかし今日話を聴いて、消費者と積極的に交流していく姿勢が大事だということが分かった」。「小中学生のころに農業、畜産業、養鶏業などをもっと詳しく知っていたら、自分の進路は変わっていたかもしれない。学校で講演をしてもいいのでは」など、質疑や意見が活発に飛び交い、竹鶏ファームやこせがれネットワークへの理解がさらに深まりました。

いぐするテラスの取材を終えて

たくさんの人が集まればアイディアは生まれる。

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これまで私は養鶏業などの第一次産業の会社に対して、同業会社はライバルで、異業種の会社は関わる必要がなく、他社との連携はあまりないイメージを持っていました。「宮城のこせがれネットワーク」では、他の業種間で積極的に交流を持つことで、新しい流れを生み出しています。大勢の人と協力することの大切さを実感するとともに、「地元のために何かしたい」という思いは、業種という枠に縛られないものだと知りました。
家を継ぐことを考えずに大学を卒業しても、現在は養鶏業を営んでいる志村さんのように、転機がいつ訪れるかは予想できないものだと思います。自分の就きたい職業がなかなか見えてこない私は、今から深刻に悩みすぎなくでもいいのだと心が軽くなりました。専攻にとらわれることなく、広い視野を持って将来を考えていきたいです。

いぐするテラス参加者の感想

仙台青葉学院短期大学 西坂奈畝(なほ)さん

terrace23-rep1竹鶏ファームが出来るまでの苦労、お客様に自分達を知ってもらうための努力など、農業や志村さんご自身についてのお話を伺うことができました。
なかでも「お客様から食材をおいしいと直接言ってもらえるのが嬉しい」という言葉が心に残っていて、仕事をするうえでお客様と意思の疎通を図るのは大切なことで、ただ事務的に業務をこなすだけが仕事ではないのだと考えさせられました。和やかな雰囲気のなか、志村さんも参加者も積極的に言葉を交わしていて、農業の意外な側面を知ることができました。

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この記事を書いた人

佐藤 萌
佐藤 萌
東北大学2年
機械とパソコンが極度に苦手ななんちゃって理系。仲の良い人には毒舌と言われます。心を開いている証拠です。一人旅が好きで、もっといろいろな場所に行ってみたいと思っています。