産業廃棄物となった汚泥を資材へ再生!「ジャイワット」
ジャイワットって、こんな会社!
仙台港近くの産業道路沿い。大型ダンプカーが四六時中行き交い、大量の土砂が運ばれてきます。ジャイワットは1999年創立。社名は「JApan Industrial WAste Treatment」の頭文字を取って名づけられました。
オデッサ・テクノスという汚泥処理会社がゼネコンに処理技術を売り込み、五洋建設がそれに答えたのが設立のきっかけだそうです。現在、社員10名。
ジャイワットの業務は、建設工事などで出る汚泥をリサイクルし、建設資材として販売することです。
「汚泥とは、『ダンプカーの荷台に山積みできず、またその上を歩けないような土』と説明できるんだよ」と話すのは、常務取締役の山本順一(66歳)さん。五洋建設からジャイワットに移動し、今年で9年目になるそうです。
現在は、東日本大震災後の復興工事で出る汚泥処理で業務に追われています。
汚泥処理で生まれる建設資材「シマルッサ」
ジャイワットが扱うのは無機汚泥です。中には、クロム、亜鉛などの金属や水が含まれている汚泥もありますが、ジャイワットでは土壌環境基準値(生活に悪影響を及ぼさない基準)以内の汚泥を処理しています。
無機汚泥は、リサイクル処理せずには埋め立てることができない産業廃棄物です。
リサイクルされた汚泥は、ジャイワット独自の建設資材「シマルッサ」として生まれ変わります。
シマルッサの由来は、「締まる砂」。親しみやすさを感じさせるネーミングです。敷地内になる汚泥再資源化施設(通称:仙台エコランド)で処理されています。
汚泥は10㎥もの大きさの二つの汚泥貯留槽に入れられます。
100㎥は10万ℓ。一般的な家庭にある浴槽は200ℓ前後と言われていますので、二つ合わせて1000倍も入ります。
バックホウという重機がショベルで汚泥と水をかき回します。まるで巨大なお玉のように滑らかに動く様子は圧巻です。
かき混ぜた汚泥をバックホウで機械の中に投入し、ポリマーとセメントを混ぜ込みます。
ポリマーが水に溶け、土とセメントを吸着させることで汚泥を固めるそうです。
処理された汚泥はタイヤショベルで運ばれます。
巨大な車体からは想像できないほど動きがスピーディ。ショベルが土を運ぶ音が鳴り響き、ダンプカーとタイヤショベルが行き交う光景は、
私をはじめ、同行した近藤編集長と撮影スタッフの安部さんをすっかり重機ファンにしていました。
セメントの固まる性質が弱まるまで1か月程寝かせてシマルッサの完成。
これらの工程を経て、汚泥は建設資材シマルッサへと生まれ変わります。
シマルッサは、雨や乾燥に強く、十分な強度を備えた建設資材です。
埋め戻しや河川堤防、宅地造成等様々な用途で使われ、県内外から住宅の基礎工事等や4号線バイパス拡幅工事の路床にも採用されていると言います。
ジャイワットのシマルッサは、扱いやすさ等の評判と震災需要もあり、供給が追い付かないそうです。
事業自体が環境にやさしい
土を掘り返してもまた埋め戻せないこともある。同じ土のはずなのにどうしてなのか。取材前から疑問に思っていました。
「建設工事等で発生する土に重金属(ヒ素やクロム等)や水分が含まれているせいでそのまま埋めてしまうと健康被害や環境破壊等の原因となることもある」
そのため、工事の前に土を検査しなければならないそうです。
「一方で、元々重金属が多い地域であり、天然由来でのものであっても法律で規制させているので埋め戻せないこともある」
宮城県内のヒ素が多い地域や沿岸にはフッ素・ホウ素が多い地域等があると山本さんは教えてくれました。
ジャイワットでは、汚泥に処理を施すことで、建設現場で使える建設資材シマルッサとして再生します。
「シマルッサに加工することで新たな山砂を必要にしない」
山本さんが取材の中で何度も口にした言葉でした。
建設工事等では、山砂を運んできて埋め立てる等を行うこともあるそうです。
山砂はもちろん有限であり、乱用は環境的にもあまりよくはないといいます。
ジャイワットの事業内容自体が環境保全につながっていました。
しっかりとした安全管理
ジャイワットの汚泥のリサイクルは、ポリマーとセメントを混ぜ込むなどを行うシンプルなものでした。
「それゆえに厳格な安全管理が求められている」
山本さんは教えてくれました。
土壌汚染対策の実施と健康を保護することを目的として、平成14年に「土壌汚染対策法」が制定されました。
従来ならそのまま埋め戻されていたような土が、厳格な基準をクリアしなければならなくなったそうです。
そのため、土はきちんと検査しなければならなくなり、処理の流れをマニフェストで確認しなければならなくなりました。5年分のマニフェストの保管を行う等、様々なことが義務づけられています。
ジャイワットでは、法律が制定される前から元々独自規格を定め、それに基づいて汚泥をリサイクルしていたそうです。
また、ISO14001や国交省「NETIS」と呼ばれる外部の審査も行っています。
「ISO14001は、『環境保全』を目的としている規格で、汚泥処理物の検査体制の充実など環境に配慮した取り組みを厳しくチェックしている」
山本さんはそう誇らしげに教えてくれました。
また、再生処理した「シマルッサ」の出荷記憶を全てファイルに保管していると見せてくれました。
「他社では、ここまで手間のかかることはしないよ」
そう言ってファイルを見せてくれる山本さん。ファイルには、いつ・どこで・どのくらい出荷したのか等様々なことが記載されていました。
ジャイワットでは、何があっても問題ないよう何重にも安全対策を行っていました。
先を見据えた真摯な経営
「震災後、汚泥処理の需要は急増しているけど、今後の需要は減っていくと思う」
山本さんは冷静に今後の展望について語ります。
2・3年後には、震災前の3万t程度になると考えているそうです。
そのため、震災需要で仕事が忙しくても、人を雇うのも増やすのも抑えていると言います。
将来的には、千葉県に製紙工場で発生する製紙灰の処理工場を建設し、現在の仙台の汚泥リサイクルと併せて仕事をしていくそうです。
ジャイワットではこうした目先の利益に囚われず、変化する社会に合わせた会社の在り方を模索している経営をされています。
また東日本大震災の津波で事務所や重機の他、保管していた書類に被害があり、改めて作り直したとのことでした。
コツコツと日々の業務に対して真剣に取り組むジャイワットは、企業として将来への最善を尽くす姿勢が感じられました。
取材前にテレビや新聞でそれらを見聞きしても、現実味があまり感じられませんでした。
厳密な検査やその資料を拝見し、何よりも汚泥をダンプカーや重機で運びリサイクルをしている光景が、私の考えを変えました。
「建設工事等で発生する土砂は、そのままでは害になることもある」
山本さんは、事前に資料を用意して、普段の仕事を一つ一つ見せてくださりました。
そのおかげで、目で耳で直接「建設汚泥のリサイクル」という業種を取材できました。
土という身近過ぎて気が付けない存在の大切さを山本さんは教えてくれました。
1月は公共事業で発生する汚泥のリサイクルのため、今期で一番忙しい時期だったそうです。
そのような状況で、ジャイワットは取材に応じてくれました。
世の中には大切だけれども、人々から意識されない仕事は世の中に多くあります。
しかし、ジャイワットのような企業があると知り、何気ないこともより深く考えたいと思うようになりました。
従業員数 | 9名 |
資本金 | 2600万円 |
住所 | 仙台市青葉区柏木一丁目2番45号 |
電話番号 | 022-254-3150 |
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