記者(個人)

死の跡から見えるもの

三浦光 三浦光
454 views 2014.03.04

ドアを開けると目の前は血の海。鼻の奥を死臭がさした。部屋中に無数のウジ虫やハエがいる。「死後数日たった部屋の様子はだいたい共通しています。足の踏み場もありません。部屋に入るときはいつも覚悟が必要です」。作業員菊池哲也さん(43)は、遺体が搬出された後の数々の現場を振り返りながらそう語る。

 菊池さんが勤務する「特殊清掃仙台ホーキング」(仙台市青葉区)は自殺や孤独死で亡くなった現場を清掃し、遺品整理を行う。汚れや臭いなど死の痕跡を清掃し、原状回復させるのが役目だ。社長は及川信一さん(66)。ビルメンテナンス会社の一部門として2011年2月に創業した。依頼主は遺族や不動産会社。現場には作業員4、5人で向かう。着くとまず見知らぬ故人に「清掃させていただきます」と線香をあげ、手を合わせる。

▲遺品のアルバムを見る菊池さん

 部屋に入ってから防護服に着替える。悪臭の中でも窓は全開にできない。隣近所に気づかれないようにするためだ。悪臭を消臭器で和らげ、ウジやハエを掃除機で吸い取る。死後何日も経過すると、床や壁に体液が人の形に染み込み、すべて交換となる。

 作業中菊池さんは思うことがある。「(遺品整理の作業で手に取る)写真には仲間や家族の姿が写っていて1人じゃなかったのに、なんでこうなってしまったのだろう」

 ある現場では血に染まった手の跡が残る洗濯機があった。「這い上がろうとしたのか、何か訴えようとしている跡を拭くときは故人の気持ちをなくしてしまうようで心が重かった」と語る。故人の思いは世間に届くことなかった。誰にも看取られず亡くなってしまった跡に何も思わないではいられない。

 高度経済成長後、核家族化の進行などでプライバシーが以前にも増して重要視され、結果、人々の孤立化が進んできた。それに伴い、孤独死や自殺が社会問題化している。東日本大震災により仮設住宅での孤独死も増加している。社会的に決して好ましいことではない。

 そうした死の現場をひっそりと片付けるのが特殊清掃の役割。及川さんは「特殊清掃は今の社会を見ると誰かがやらなければならない仕事。これからも続けていく」と語る。

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三浦光
三浦光
東北学院大学3年
東北学院大学3年
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