記者(個人)

技能継承が見つめる未来

斎藤万里恵 斎藤万里恵
99 views 2014.02.27

大きな窓から射し込む太陽に漆を光らせた仙台箪笥がずらりと並ぶ。

仙台市若林区南鍛冶町にある門間箪笥店。創業から140年、仙台箪笥を作り続けている老舗だ。

「未来に技能を残したいんです」と語るのは、専務の門間一秦さん(37)。

▲仙台箪笥を前に、技能継承への思いを熱く語る門間一泰さん=門間箪笥店

同社の7代目。大学卒業後にリクルートに入社し、マーケティングなどを学んだ。2年前に退社し家業を継いだ。  

「たんすが使われなくなってきた」という現代社会で、技能を残すため様々な取り組みをしている。その1つ「monmaya+」では、やローテブルなど、技能を生かした商品を次々と開発。たんすの形にこだわらず、現代の生活様式に合わせることで、顧客の裾野を広げている。

来年、青葉通に新店舗を出店予定。再来年には東京、将来的には海外への展開も視野に入れる。ビジネスの拡大にも余念がない。

門間さんが技能継承にこだわるのには、たんすを使い続けたいと願う人々の存在がある。

2年前に起きた東日本大震災。被害を受けて壊れた仙台箪笥を修理してほしいとの依頼が年間20件から約2倍に急増した。

「祖母の思い出の品だから」「嫁入り道具としてもらったものだから…」。思い出とともに、たんすを使い続けたいという人々を知るきっかけとなったという。

「100年後、箪笥を直したい人がいて、技能がなくなっていたら無責任じゃないですか」

たんすに囲まれて育った門間さん。継いでから「職人がいるのは当たり前ではない」と気付いたという。技能を残すため、職人の育成にも力を入れる。

現在、職人9人のうち、20代は2人、30代が4人を占める。「やる気があればだれでも受け入れたい」と若手を多く採用する。

漆塗り職人の大橋翔太さん(24)は「作る側の仕事に興味を持って始めた。たんすを作ったことはなった」とはにかみながら話す。

仙台箪笥の価値は、「全て手仕事で行っているところ」だと言う門間さん。将来の目標は、有名ブランド「エルメス」のようにすることだ。

「エルメスはブランドとし確固たる地位を持っているが、実は製造の7割は手仕事。仙台箪笥も手仕事を大切にしながら、世間に認知されるようになりたい」

そう語る瞳は、100年先に仙台箪笥を使い続けているであろう人々を見つめている。

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