記者(個人)

伝統と生きる

小林千紘 小林千紘
49 views 2014.02.25

漆の持つ光沢や深みを活かした、漆黒のサラダボウルや花瓶。グラデーションが施され、中をのぞくとキラキラと銀色に光るグラス。TOUCH CLASSICと名づけられた、従来の漆工芸のイメージとは異なる姿だ。

 仙台市青葉区上杉の東北工芸製作所。日本の近代デザインの礎を築いた「国立工藝指導所」をルーツに持つ、宮城県指定伝統工芸品「玉虫塗」を手がけて80年の老舗だ。創業時に大成された「玉虫塗」は、赤や緑をベースとし、萩などの四季の花々や、「月とうさぎ」などの伝統的な模様が施されている。箸やお重、お盆などの他、贈答品としての需要も高かった。

しかし、「時代に合わせて伝統も変わっていかないと生き残れない」と話す、店長の佐浦みどりさん(44)の表情には、伝統を守り、つないでいく者としての覚悟が感じられた。

手軽に手に入る安価な商品の台頭、洋風のライフスタイルへの変化。一体、どんな場面で玉虫塗は求められているのか。考えた末にたどり着いた結論は、旧来のものとは一線を画す玉虫塗、すなわちTOUCH CLASSICであった。

▲店頭で輝く、TOUCH CLASSICの商品たち=仙台市青葉区上杉の東北工芸

「普段使いできて、和と洋を選ばないものを作ろう」。佐浦さんは、震災を契機に来仙したプロデューサーの木村真介さん(34)、東北工芸の工場長である松川泰勝さん(50)と話し合いを重ねた。

これまでの技法を守りながらも、今までになかったデザインや質感の商品を創り上げることは容易ではない。ガラスを使った商品も初めての挑戦。しかし、「たくさんの人に、もっと伝統に触れてほしい」という同じ思いのもと、その壁を乗り越えることができた。

 こうして生まれた新シリーズの評判は上々である。雑誌の特集を飾り、海外からも注文が舞い込んだ。海外への販路の拡大は、今後の事業展開の足がかりにしていく。

 「玉虫塗に愛着を持つ人を増やしたいんです」と佐浦さんは微笑む。玉虫塗を、さらに人々の暮らしの中へ溶け込ませる試みに、願いを込める。

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小林千紘
小林千紘
東北学院大学3年
東北学院大学
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