ほっと一息つける 時代に
「ひとつのテーブルを囲んでお茶を飲んだりとか、会話をしたりとか、そういう風景を取り戻したい」。そう語るのは、井ヶ田製茶株式会社・常務取締役今野順子さん(58)。
現代の人々は、急須で入れるような、手間の掛かるお茶と無縁の生活を送っている。彼らにとって、お茶はコンビニなどで買うペットボトルのお茶の印象が強い。まして、急須で入れたお茶を通して、だんらんするなどあまり見られない光景である。
同社はお茶を通しただんらんを取り戻すために、日々挑戦を続けている。そこには、「お客様にお茶をおいしく飲んでいただきたい」という想いがある。
「日本の三時プロジェクト」は、お茶に馴染みのない人や忙しい社会人にお茶を通してだんらんを提供した。
▲従業員とだんらんを楽しむ今野順子さん(58)=宮城県仙台市青葉区
同プロジェクトは、応募があった宮城県を中心とした100社・団体に緑茶や茶菓子を送った。そして、プロジェクト実施日の3月18日午後3時、忙しい会社や団体はお茶でほっと一息ついた。
同社はプロジェクトを実施するにあたって、ペットボトルのお茶ではなく、急須で入れたお茶を提供した。急須で入ると、時間がかかり、手間である。しかし、その行動に意味がある。ゆっくり、ゆったり時間をかけること。それこそ、ほっと一息つく時間を与えるのだろう。
春の「日本の3時プロジェクト」は企業・団体が中心であった。今秋に開催されるプロジェクトで、同社は様々な方面からの応募を期待している。
「被災者のコミュニティからの応募があれば、ぜひ届けたい」と今野さん。それ以外にも、小学校、中学校などの教育機関、日ごろ家事育児に頑張っているお母さんからの応募案も検討中である。
普段、会社で与えられた仕事はやり遂げなければならない。被災地がいち早く復興するために、少しの時間も惜しまなければならない。もしそうなら、お茶を飲んでいる暇などないかもしれないが、そんな時こそ、井ヶ田のお茶を飲む。そしてほっと一息つく時間を過ごす。そこに会話が生まれ、みんなが交流し、一緒にだんらんを楽しむのはどうだろう。