テラス

「愛さんさんビレッジ株式会社」小尾勝吉さん【いぐするテラス】

高井 健次 高井 健次
394 views 2018.12.06

働くことが難しい人も輝く理想の村づくり

10月31日「いぐするテラス」のゲストは、高齢者福祉と障害者福祉を一緒に行う、「愛さんさんビレッジ株式会社」の小尾勝吉(おび・かつよし)さんです。学生を相手に話をするのは、初めてとのことでした。

愛さんさんビレッジは、東日本大震災をきっかけに誕生した、高齢福祉と障害福祉が一つ屋根の下に共存する「新しい福祉の形」を目指している組織。働くことが難しいとされてきた障害者が成長して、高齢者の支援を行っています。なぜ今の仕事をするようになったのか、小尾さんの生きざまを語ってくれました。

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問い続けた「自分はなんのために生きているのか」

神奈川県で生まれ、ごく普通の4人家族で過ごしていた小尾さん。人生の転機が訪れたのは、小学5年生の時、両親の喧嘩が始まったことでした。それはもうひどいこと、自分で警察を呼ばなければならい時もあったそうです。そのような中で、毎日「自分はなんのために生きているのだろう」と考えていたといいます。

高校に入ると母子家庭になりましたが、母親の支えもあり大学に進学することができました。それでも、いつも「自分はなんのために生きているのか」と自分に問いかけていました。

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あっという間に就職活動の時期になりましたが、受けた会社は全部不採用。すると、小尾さんは母親に頼み込んで1年の期限もらい、尾崎豊を目指してCDデビューを果たしました。しかし、歌手活動もそう上手くはいきませんでした。

そんな中、あることに気づいたという小尾さん。それは「一番生きがいを感じられるのは仕事の種類ではなく、心の底から“ありがとう”と言ってもらえること」だということでした。自分の生きがいを理解したことで、初めて人生の問いに答えが見つかったのです。

そして、その答えを実現できるのは“経営者”だと考え、10年後に創業することを決意しました。それは、2001年のことでした。

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プライベートはハピネス、ビジネスはサクセス

創業の準備を進める中、起きたのが東日本大震災でした。ボランティア活動を通して、小尾さんは避難所で孤立し食事に困る高齢者の多さと、働く障害者をとりまく厳しい環境に気づきました。

そこで、まず始めたのが「食事宅配サービス」です。順調に進んでいたある時、従業員5人が仕事を辞めてしまいました。それを機に、小尾さんは「自分の思いの押し付けがあったのではないか。皆同じ思いに共感して走っているわけじゃないのではないか」と考えました。

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もう一度、自分の事業を見つめ直していた頃に、お客様から「食事が作れるようになったから、もうお弁当はいらない」という声がありました。宅食サービスの本質は、まさにその“必要なくなること”だと気づき、「宅食サービスだけやっていてはダメだ」と考えた小尾さん。その結果、会社の理念は「家族愛・親孝行」に、ビジョンは「出あい、ふれあい、生かしあい」になりました。

そして、小尾さん自身も経営者として、判断の純度を高める必要があると感じ、軸のある生き方を目指します。
小尾さん「『愛、誠実、感謝』を土台として、これからどう生きていくのか。人生のビジョンは『プライベートはハピネス、ビジネスはサクセス』」。

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課題先進地で福祉に挑む

最後に、小尾さんは障害者の雇用の現状について話しました。
日本の障害者の人口は6.8%、約860万人です。そのうち働いているのはわずか5%だといいます。小尾さんによると「仕事の内容のほとんどが、AIに奪われる可能性がある」。給与水準も高くはありません。

宮城県では介護人材が不足していて、障害者雇用は2014年・2015年の2年連続で全国ワースト1位。先進国の中でも、高齢化社会の影響を早く受けるのが日本だと言われており、世界が注目しています。その日本の中でも、課題が多い宮城県は“世界の福祉の課題先進地”なのです。

▼愛さんさんビレッジの業務内容や、小尾さんの創業の詳しい経緯は、「ワタシゴトVol.36」でご紹介しています。こちらの記事もぜひご覧ください!(画像から記事のリンクに飛びます)

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取材を終えて

入ったら終わり、生き延びる手段の1つのように、福祉施設に対して正直、良い印象は全くありませんでした。しかし、小尾さんのお話を聞いて、そうじゃないところがあるということを知りました。
愛さんさんビレッジでは、生きがいを作っています。高齢になって体が不自由になってしまったり、障害があって周りとうまくいかなかったりしていても、ここには生きがいがあります。世界の福祉の課題先進地で頑張る小尾さんに惚れました。
高齢者が増えていくことは間違いない事実なので、“高齢になっても幸せに生きていける”そんな国になったら良いなと思うと同時に、自分の生きがいとは何かを考えさせられた時間でした。

文章:高井 健次(東北学院大学2年)
写真:稲葉 史恵(ワカツク)

「小尾さんと何かやってみたい」そんな学生のあなたへ!

愛さんさんビレッジでは、2019年2月~3月の大学の春休み期間に、大学生のインターンシップを募集しています。次のリンク先から募集要項が見られますので、興味のある方はチェックしてみてください!
【広報/PR】目指せ福祉のイメージ革新!震災後ソーシャルベンチャーのPR戦略を考える。

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この記事を書いた人

高井 健次
高井 健次
好きなものは、バイクと自衛隊です。夏の復興・創生インターンに参加したのを機に、めちゃめちゃ漁業に興味を持ちました‼熱い社会人の方のお話を聞くのが大好きです。自分も熱い社会人になりたいなぁと思っています(笑)