学生記者がお仕事の魅力を発見!仙台イケてる会社訪問
イケ社

安全第一に地元の入学式から全国コンサートまで!感動を演出する「東放」

小保内真知 小保内真知
701 views 2015.03.24
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小保内真知 小保内真知 東北福祉大2年(執筆当時)
東北最大の都市・仙台では数々の有名アーティストのコンサートが頻繁に行われます。研ぎ澄まされたパフォーマンスはもちろんのこと、皆さんは舞台演出にも目を奪われたことはありませんか?実は、舞台の設営から運営までを一手に引き受けるクリエーター集団が仙台にいると言うのです。今回は「株式会社東放」を取材してきました。

東放って、こんな会社!

仙台市青葉区八幡町の閑静な住宅街にある東放。茶色のレンガで造られた建物がレトロな雰囲気を醸し出しています。創業は1959年、社員は総勢12名です。東北各地のコンサート、イベント、スポーツ大会、式典などの幅広い舞台の設営から運営までを行っています。

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これまでの実績として国民的アイドルグループ「嵐」のコンサートや「ディズニー・オン・アイス」仙台公演、「秋田わか杉国体」など、東北各地で行われた数々のイベントに携わってきました。
一方、地元に密着した仕事も大切にしていて、宮城県内の大学の入学式や卒業式の設営なども長年にわたって手掛けています。舞台を作る際にはたくさんの人手が必要なので、当日は従業員総出で作業を行うほか、下請けの会社の職人や学生アルバイトの協力も欠かせません。制作技術・総務兼務の福澤篤志さん(40)にお話を伺いました。

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仙台の企業魅力3つ

東北地方一帯の「吊り物」を請け負う

1つのイベントを創り上げるために、映像や音響、特殊効果などの専門技術を持つ業者が協力しています。この中で、福澤さん達が主に請け負う仕事は舞台設営。「全ての作業の基盤となる工程なので早さと確さが求められます」と言います。それでは、舞台設営とはどのような作業を行うのでしょうか?

コンサート会場の設営の行程

①土台作り

台上の床を傷付けないように、体育競技場などに使われる柔らかなウレタン素材を敷き詰めます。その上にベニヤ板を敷き、さらに資材を保護する役目の養生用シートを敷きます。

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②吊り物の設営

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特に大がかりな行程が「吊り物」の設営です。東放は様々な舞台の設営の中でも吊り物に強く、東北各県のイベントを幅広く請け負っています。吊り物とは幕や看板、舞台照明器具、音響機器などをつり下げる舞台セットのこと。例えば、2月に行われたGLAYのコンサートでの吊り物の総重量は18トン以上にも及びました。
このような大変な重量を吊り下げるためにはまず、事前調査が必要となります。柱と柱の間に渡している杭は古くなったり、ボロボロになったりしている場合があるので、社員が状況に応じて使えるかどうか長年の経験から判断します。その後、綿密な重量計算を行い、社長の水本勇二さん自ら設計図を作成します。最後に、杭の上に組み立てた鉄骨に1個で1トンを支えることができるモーターを取り付けます。「お客さんの要望によって、照明や幕を吊るす場所を増やすこともあるんですよ」と福澤さん。東放の吊り物作業の強さの秘訣はお客様のどんな望みにも柔軟に対応できる技術と長年の経験なのです。

③吊り物に音響機材や照明機材を取り付け

④基礎舞台の設営

⑤場周りのセッティング

売れ残った見切り席等を黒幕で隠したり、音が外に漏れないよう会場の1番後ろに幕を垂らしたりします。

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昔は吊り物作業という仕事はあまり多くありませんでした。近年になって大規模なイベントや大がかりな演出のコンサートが行われるようになるにつれて、需要が増してきたのだそう。
お客さんの要望に応えていく過程で東放も変化してきました。「時代の流れと共に仕事の内容も変化させていかなければなりません」と言います。世の中の動きや “旬”に敏感かつ柔軟に対応しています。

プロレス・野球等スポーツの興業屋から始まった55年の歴史

舞台設営のほかに、力を入れているのがチケット販売の委託業務。東放の売り上げの2割を占めています。
その原点は55年前にありました。1959年、福澤さんのおじいさんで東放の創業者・故水本金明さんは戦争から帰還し、仕事探しに奔走していました。当時、高度経済成長期の真っただ中であった日本では三種の神器の1つである「白黒テレビ」が普及し始めていました。家族やご近所さんがテレビを囲み、食い入るようにプロレスを観戦する様子を見た水本さんは「これだ!」と思ったそう。
目をつけたのは興行屋でした。当時人気だったプロレスや相撲などの公演をまるごと買い取り、入場料の徴収から催し物の運営まですべて請け負う仕事です。地元の新聞社、放送局の協力を得て、前身となる「有限会社東放興業」が誕生しました。

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当時はサーカス、歌謡ショーなどの仕事を請け負ったそうです。その後、メイン事業は舞台設営になりましたが、興業屋から始まった歴史を守り現在もチケット販売を続けています。「顔が広かったおじいさんの人脈は今も生きていて、当時から現在までお付き合いが続いている会社もあるんですよ」。時代や仕事内容は変化しても、人と人とのつながりは変わらずに受け継がれているんですね!

「誠実と安全」から生まれる「信頼」

「私が最も大事にしていることは『誠実と安全』です」と話す福澤さん。「私たちにとっては数ある仕事の中の1つですが、お客さんにとっては年1回、さらには数十年に1回の大切なイベントであるかもしれないんです。すべてのイベントに誠意を持たなければなりません」とにこやかに話します。

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例えば東日本大震災の2日前。マグニチュード7.3の予震が起こった時、仙台市のグランディ21では有名な演歌歌手が出演したイベントが開催されていました。幸い会場は、大きな被害を受けずにすみましたが、福澤さんは4日後に福島で行われる予定だった「NHKのど自慢」の会場設営を「万が一に備えて強化をしなければいけない」と判断し、急きょ屋根に補強を加えたそうです。結局「NHKのど自慢」は中止となってしまいましたが、その場所で大きな事故はなく、その後原発事故で逃れて来た人々の避難所として活躍しました。
このように、「イベント設営では事前の出来事から、その次に起こる出来事を予測し、お客さまの安全を確保することも大切な仕事の1つ」なのだと言います。
 また「屋外でのイベントで一番気を使うのは『風』なんです」。テントが飛ばされる可能性が大きいので危険度が高く、その日の天候など状況に応じてシートをはがすなどの処置が施されます。さらに、野外ステージでは鉄骨がお客さんの方にだけは絶対に倒れないように斜めに組み立てたり、地面に杭を打ち、ワイヤーで固定したりするなど工夫しています。場所や天候、状況に応じて調節を行うプロ集団なのです。

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お客さんの笑顔のために

これまでで最も印象に残っているイベントは「ディズニー・オン・アイス仙台公演」だとか。その理由は「子どもの輝く笑顔が見られるから」と言います。
東放はこのイベントが始まった当初から30年間絶えることなく携わっています。スケートリンクの設営はほかのイベントより数倍手間がかかり、全作業を終えるのに大体1週間かかります。そして、氷を敷いた後も24時間体制の氷の管理が必要となります。氷は風に当たるとすぐに溶けてしまうので暑い夏の日でも作業中に冷房を付けることはできません。冷却システムで氷を維持しつつ、イベントが始まる直前までは冷房を消しておき、お客さんが入ってきたと同時に冷房を付けるのです。
「優雅にショーなんて見ていられませんよ。でも、子ども達がディズニープリンセスのコスチュームを着てニコニコとしている姿を見ると何ともうれしい気持ちになるんです」。夜中まで作業をしようとも、月に1、2回しか休みがなくとも、ここまで頑張ることができるエネルギーの源はお客さんの笑顔にあったのですね。

大学の入学式で椅子が綺麗に並んでいること、コンサート会場へ行けば素晴らしい舞台が設営されていること。これまでの日常生活の中で見過ごしてきた部分でした。今回の取材を通して、舞台を成功させ、人々の笑顔が見たいと願う多くの人々の努力と協力の上に1つ1つのイベントが成り立っていたことに気付きました。「当たり前」に感謝する心。この心こそがイベントを見る目を変え、さらにはより大きな感動を生み出すのではないかと思いました。

小保内真知小保内真知東北福祉大2年(執筆当時)
文章:名前(○大学○年)
写真:名前(○大学○年)
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株式会社東放
http://www.sendai-toho...
資本金10,000,000円
住所宮城県仙台市青葉区八幡町1-2-5(本社)
電話番号022-223-6767